「爽ちゃんだって、ちっちゃくて細いやん。」
「細くないです!男性基準の細いと、女性基準の細いは違うんですから!」
「そう?ん、じゃあ、本当に細いかどうか確かめてみよ、」
「えぅっ?」
先輩が立ち上がって、おもむろに私の椅子へとやって来た。何をするのかと思えば、そのまま私が座る後ろを跨いで。「んっしょ。」と言いながら、私の背中に密着して座った。
カンガルーの親子のような格好。
座る面は割りと広めな木の椅子。先輩が後ろから、私の腰に手を回してきて、ぎゅっとしがみついてくる。
「なっ。待っ。え!」
「ほらな。やっぱり細い。」
「だめです、緊張して、全く食べれません!」
「俺も今、心臓ばくばくいっとる。爽ちゃん、お酒取って。」
「ほん、ほんとに心臓ばくばくしてますかっ?」
木のテーブルにある湯呑みを取ろうとすれば、先輩が抱きついているせいで全然そこまで届かない。
「なあ、お酒取って。」
「まっ!……りっくん、届かない!」
「3.141592653……」
「……58979323846264……、ふう。ギブアップです。」
「なんで続きゆうた?キスを自制しようと円周率唱えとっただけなのに。」
「〜〜〜っ」
結局自制心は抑制されず、そっと振り向いた私は、先輩にキスをされたのだった。
ほのかに酔っぱらった唇が、とっても愛おしい。



