こっから先ははじめてだから


「付き合う前と変わらんことしてるのに、手が緊張しよる。」

「そ、そうですか?全然、緊張しているようには見えないですよ?」

「余裕に見せてるだけやって。」 

   
私の手を離した先輩。


隣でしゃがむ私に、見せかけの笑顔を向ける。


「緊張して、きっと今まで通りにいかへんことも多いと思う。」

「……そう、なんですか?」

「男を舐めたらあかんよ爽ちゃん。好きな人に触れれば触れるほど、欲が出るもんやから。」

「よ、欲っ?!」
                       
「今だって、もっかいキスしたいくらいには思っとる。」


恥ずかしくて、緊張で手足が震えて、しゃがんでいるから痺れてるだけかもしれなくて。


灯った火が細く燃え上がって、そこに先輩が新しい薪を置いていく。


伏せた瞳と火を見入る瞳をいくらか反芻させて、それから決心がついたように、痺れた足を動かしてみた。


「ん、爽ちゃん?」   


もっと、瞬間的に不意をついてキスしたかったのに。残念な私の手足が、痺れすぎてゆっくりとしたモーションしか発動せず。


はい、1、2、3と順を踏むようにして、先輩の頬に唇がたどり着いた。


温まったその頬にキスをすれば、先輩が口元を手で隠し、「なんやねん」とつぶやいた。 


「せ、先輩が、もっかいキスしたいってゆったから。」

「……ほうか。一瞬、こけるのかと思った。」


なんでやねん。私もです。