俺は別に、英雄になりたい訳ではなかった。
彼に憧れて、彼を倣おうとした訳ではない。
ただ俺は、気づいてしまった。
気づいてしまったからには、目を背けることは出来なかった。
気にしないようにしても、どうしても目に入ってしまうのだ。
この国の理不尽と、不平等が。
父とその同僚の堕落ぶり。飢えた人々の目。処刑される人々の叫び。それを見て騒ぎ立てる、空虚な人民達。
どうしてこの国は、こうなってしまったのだろう。
この国の正義は、何処に行ったのだろう。
一度考えてしまうようになってからは、もうやめられなかった。
父や家庭教師に話せば、平手打ちが飛んでくることは分かっていた。
だから、周囲の人間には長い間口を閉ざしていた。
こんなことを考えているなんて、誰にも知られる訳にはいかなかった。
口に出すべきことではないと分かっていた。
だから、あのまま何も起きなければ、俺はきっと…父と同じ道を行っていたはずだ。
己の中に矛盾を抱えながらも、それでも父と同じ、安楽な人生を送ることを選んだだろう。
そちらの方が遥かに楽で、堅実な人生だった。
けれど俺は、その道を選ばなかった。
俺がその道を選ばなかったのは…幼い日の、あの出来事があったからだ。
彼に憧れて、彼を倣おうとした訳ではない。
ただ俺は、気づいてしまった。
気づいてしまったからには、目を背けることは出来なかった。
気にしないようにしても、どうしても目に入ってしまうのだ。
この国の理不尽と、不平等が。
父とその同僚の堕落ぶり。飢えた人々の目。処刑される人々の叫び。それを見て騒ぎ立てる、空虚な人民達。
どうしてこの国は、こうなってしまったのだろう。
この国の正義は、何処に行ったのだろう。
一度考えてしまうようになってからは、もうやめられなかった。
父や家庭教師に話せば、平手打ちが飛んでくることは分かっていた。
だから、周囲の人間には長い間口を閉ざしていた。
こんなことを考えているなんて、誰にも知られる訳にはいかなかった。
口に出すべきことではないと分かっていた。
だから、あのまま何も起きなければ、俺はきっと…父と同じ道を行っていたはずだ。
己の中に矛盾を抱えながらも、それでも父と同じ、安楽な人生を送ることを選んだだろう。
そちらの方が遥かに楽で、堅実な人生だった。
けれど俺は、その道を選ばなかった。
俺がその道を選ばなかったのは…幼い日の、あの出来事があったからだ。


