最強男子・神宮寺兄弟からの溺愛が止まりません‼

 私は仁さんにこれまで私が寝た後や寝た時のことについて教えてくれた。
 私が寝た後、三人はすぐに勉強会を中止にして私を仁さんの部屋へ運んできたらしい。陸さんはどこかに出かけるらしく、類さんは私と二人きりになることを避けると思い、仁さんの部屋になったらしい。
「め、迷惑かけてごめんなさいっ…。」
 私が謝ると、仁さんはどうでもよさそうに、「気にしないで」と言ってくれた。
「本当にありがとうございます。」
「気にすんな」
 ほ、本当にいいのかなっ…。
 そんな時、仁さんのスマホが鳴った。
 仁さんはスマホを見た途端、顔をしかめた。
「ごめん、電話。」
 そういって部屋を出て行ってしまった。
 私はしばらく仁さんを待っていた。

―――――ガチャっ

 ドアが開くような音がしたのでそこに行くと仁さんが立っていた。
 仁さんは上着を羽織っていかにも外に出る準備をしている感じだった。
「どこかに行くんですか?」
 私が聞くと仁さんは準備をしながら「ああ、ちょっと」と言った。
 時刻を見ると八時を回っていた。
 寮では七時以降は外に出てはいけない、というルールがあるのにっ…。こんな時間になんで?
 私は不安で泣きそうになった。
 そのことに気付いたのか仁さんは私を抱きしめてくれた。
「白鳥…。ごめん。冷蔵庫にあるの適当にとって飯食ってて。風呂も隙に入って。寝るときは俺の布団で寝て。」
 そう言うってことは私が寝るまで帰ってこないってことっ…⁉
 なんでっ。
「いやっ。行かないで。行ってほしくないっ。」
 私は駄々をこねた。もう仁さんに会えない気がして怖い。
「もし俺が帰ってきたら白鳥…結の手料理食わせて。」
 〝もし〟って帰ってこないってこと…?
 私は怖かった。仁さんは行き先を教えてくれない。傷ついたような悲しそうな顔で私を見つめてくる。
 泣きたいのはこっちだよっ。
 仁さんは最後に頭をなでて玄関の扉の前で止まった。
「結、好き。大好き。」
 そういってドアを閉めた。
 ばかだ。私、ばかだからやっと気づいた。仁さんにドキドキするのもすぐに顔が赤くなったり、もっと知りたいって思ったりするのも全部っ…、全部、仁さんのことが好きだからっ…。
 私はもう少し、もう少し早くに気持ちに気付いていたら結果は変わっていたかもしれない。
 私は…一人で泣くことしかできなかった。

 あれからどれだけ泣いたのだろう。
 しばらく泣いて落ち着いたとき、私は何もする気にならなかった。
 心に大きな穴が開いたみたいにただつらくて悲しかった。
 私は疲れてしまったのかそのまま寝てしまった。



 なんだか体が浮いているような…。
 うっすら目を開けると仁さんの顔が見える。
 仁さん…
「仁さんっ⁉」
 私は仁さんにお姫様抱っこをされていた。
 私が突然大きな声を出したのか仁さんは私を見て目を見開いていた。
 よく見ると仁さんは少し口元にたたかれたかのような殴られたかのような跡があった。
「その傷っ…。」
 傷にそっと触れると仁さんは一瞬痛そうにした。
「ああ、ぶつけたんだ。」
 そういって笑って見せる仁さん。
 …嘘だ。仁さんは嘘をついている。目の奥が笑っていないようなそんな顔。
「嘘つき…。」
「結…?」
 私は悲しくなった。
 隠しているとかどんどん嫌なことを考えてしまう。そんな自分が嫌になる。
 もうっ、どうすればいいのっ…?わかんないよっ…。
「私がどれだけ心配したか、知らないでしょっ‼一人で抱え込まないでよっ…。」
 私はそう叫んでいた。
 心の中のふたが爆発したかのようにどんどん嫌な言葉が流れ出てくる。
 気付いていたら私は泣いていた。仁さんは悲しそうに私を見ている。
 違うっ、私は仁さんにそんな顔をしてほしかったわけじゃない…。私っ、最低だっ…。勝手に傷ついて怒って仁さんを困らせて…。
「結…、ごめん……。」
 仁さんは私をベッドに下ろしてそういった。
 仁さんは何も悪くないのにっ…。
「ご、ごめんなさいっ。こんなつもりじゃ…。」
 仁さんは何も言わずうつむいている。
 ほ、本当にごめんなさいっ…。
「ごめん、ちょっと…。寝てていいから。おやすみ。」
 ばたんと仁さんが出ていき、むなしく部屋に響いた。
 …仁さんを気付つけてしまった。
 このままじゃ、いやだっ‼
 私は気づいたら走り出していた。
 仁さんっ…!
 仁さんが行った方向に足を動かして仁さんの背中が見えた時。
 とっさに抱き着いていた。
 仁さんがこっちに気付いて振り向いたときに抱き着いてしまったから今、正面に仁さんの胸がある形になってしまったけど。
「ごめんなさいっ…。」
 私は泣きまくって仁さんにすがっていた。
「結、心配かけてすまなかった。」
 仁さんは声を絞りながらそう言ってくれた。
「いやっ、私が悪いんですっ。」
「どこに行っていたか話すから、聞いてくれないか?」
 えっ…?話してくれるの…?
 私は顔を上げて仁さんの言葉を待った。

 電話をかけた人は仁さんのグループの下っ端だったらしい。下っ端からの話の内容は『フォースが動き出した。俺たちの仲間はボコされてフォークスの総長がノヴァの総長をボコすと今連絡が入った。応援を頼む。』という内容だったらしい。
 フォースというのは一番悪い組織で、犯罪じみたことにまで手を染めているらしい。
 ノヴァは少し横暴な組織だけど悪い組織しか倒さないというある意味いい組織らしい。そのノヴァの総長が仁さん。仁さんは応援で今日は出て行ったらしいけど今回は仁さんが来る前にフォースの総長がいなくなってしまったらしい。
 だけど明日、正々堂々ノヴァとフォースの戦いが行われるらしい。時間は七時から、廃棄の公園であるらしい。

 って、仁さんは総長だったの⁉
 今知った事実に目を見開く。
 それに、陸さんも類さんも明日の七時に行っちゃうってこと⁉
 私は心配で見つめると、余裕そうに仁さんは笑っていた。
「大丈夫。だけど一つだけ、俺と約束してくれない?」
「は、はい…。」
「俺たちは明日戦いに行くけど、絶対に結は来ちゃダメ。わかった?」
 その声からは仁さんが私を心配してくれているからだとわかって仕方なくうなづく。
 うなづくと小さい子をほめるように「いい子いい子。」と頭をなでてくる。
「仁さんっ。絶対に生きて帰ってきてくださいっ。」
「…ああ、約束する。」
 私は思わず仁さんに抱き着いた。力をいっぱいこめてだきしめると仁さんは私よりも強く抱きしめてきた。
「うぐっ、ちょっと苦しいかもですっ…。」
「ふはっ、ごめんごめん。」
 仁さんは力を緩めてくれた。私は途端に仁さんへの気持ちがあふれてきそうになる。
 この気持ちは今は必要ない。もし、その必要な時が来たなら伝えたい。
 私は心の中からそう思った。