最強男子・神宮寺兄弟からの溺愛が止まりません‼

 とあるヤンキー学校で、学校のトップの座を取ると、絶大な人気と権力を得ることができる。腕っぷしの男子が集まるためか、共学なのに女子は滅多に入学することはないという。
 それに、この学校は腕っぷしの男子、男子、男子だらけ。だから、できるだけ関わらず、静かに暮らして、何も問題を起こさないことが絶対安全。

「はー、疲れたー。もうやだー。」
 そういって机に突っ伏している友達・すずちゃん。中学生からの仲で、今は数少ない私の親友!
 すずちゃんは、可愛くて喧嘩も少し強くて正義感が強くて、すごく素敵な友達だよ。だけど少し、勉強が苦手みたい。
 すずちゃんは、実はすっごく喧嘩が強くて〝オーブ〟というヤンキーグループに所属している。私はその総長。喧嘩は好きじゃないけど、自分の身を守るということでケンカを学んだ。すずちゃんは強い人が好みらしく、私も成り行きでこの学校に入学した。寮生活もできるというところが入学の決め手だった。
「大丈夫。きっと定期テストもがんばれば、乗り越えられるよ。」
 私は大丈夫という意味も込めて両手でこぶしを握り締めた。
 さっきの小テストは、もう少しで行う定期テストに向けての力試し問題。この小テストで最悪な点数を取ってしまった人は、定期テストも危ない。
 そして、定期テストで赤点になってしまった場合、即退学という決まりがあるみたい。
 そして今のすずちゃんは退学ぎりぎりの成績。イケメン男子に会うため、この学校に来たのに退学になっちゃったら…
 考えるだけでぞっとする。
 …そのためにも、二人で乗り越えるんだ。
 すずちゃんは私のほうをちらっとみた。さっきから難しそうな顔をしている。
「でもさー、さっきの小テストがほぼわからなかったのに定期テストも無理だよー。陸様に会えなくなっちゃうー。」
 そういって、すごく悲しそうに机に突っ伏していた。
 陸様というのは、すずちゃんがこの学校に入学すると決めた理由のイケメン男子のこと。
 今までは、赤点を取ったら、補習を受けないといけなかった。だけど、この鳳凰学校では、即退学。
 私も退学にならないように気を付けないとなっ。
「一緒に頑張ろう。」
 すずちゃんに微笑みかけると、すずちゃんも微笑みかけてくれた。
「そうだね、頑張ろう。」



 やっと終わった。
 ふう、と深呼吸をして先生に順番に答案用紙を出す。
 今回は、手ごたえがある。
 もしかしたら、一桁の順位もそう遠くないかもしれない。
 それにしても、疲れたー。
 静かな空間から少しずつ、席を立って話始める人が増えていく。
 私もすずちゃんのほうへ行こうと思って、席を立った。

―――ドンっ

「きゃっ」
 私は、反動で地面に転がる。そのとたんに私の机にぶつかって、大きな音が鳴った。
 みんなが私のほうに注目する。
 誰かにぶつかってしまったようだ。
 顔を上げると、そこには茶髪のいかにもヤンキーっぽい人がいた。
 私は怖すぎてしばらく動けないままでいると、ぶつかってしまった人がこっちをにらんできた。
「おい、何してくれてんだよ」
「ひゃっ」
 こ、怖すぎる……
 その人はしゃがんで私の顔をのぞき込んできた。
 近くから見るその人の顔は、さっき見た時よりも、もっと迫力のある雰囲気と顔立ちだった。
 まるで金縛りにあったように体が動かなくなる。
 すると、私の前にさっと、誰かの背中が現れた。
「やめてあげなよ。…怖がってるじゃない。」
 すずちゃんだ。すごく、声がふるえている。
 その人は、何も動じることのないまま、もう一度私をにらんでどこかに行った。
 すずちゃんは金縛りから解けたようにその場に崩れ落ちた。
「こ、怖かったー。」
「すずちゃん。かっこよかったよ、ありがとう」
 私は、すずちゃんに駆け寄って笑顔を作った。
 すずちゃんも途端に笑顔になり、いつものすずちゃんにもどった。
「よし、今度は絶対結を守れるように頑張ろう。」
 すずちゃんにはいつも守られているから、今度は私が守らないと。
 私も、少しは強くならないと、ダメなんだ。もともと、この学校に入学するには、もっと喧嘩が強い人が入るところ。到底、私が入るできところではない。だけどすずちゃんが心配だから、もう少し頑張らないとな。
「それよりもさ、早く行こう。定期テストの発表が貼り出されているんだって。」
 え…、定期テストってさっきの?
 さっきの定期テストだとしても、三十分もたってないし…?
 そんなことはないと思っても、そのほかの貼り出されるようなテストはしていないし…。
 考えてもわからなかったけど、すずちゃんに手を引かれるまま、その場へと向かった。

 前にあるのは、さっきの定期テストの結果発表⁉
「す、すずちゃん、さっき定期テストをやったばっかりだよね。」
 息切れした私は、呼吸を整えながらすずちゃんに聞く。
 すずちゃんはびっくりした様子で、こっちを振り向いた。
「え⁉結、知らないの⁉この鳳凰学校では、最速にテスト結果が出るって一つの有名なポイントことだよ。」
 ひ、一つの有名なポイント…⁉こんな機能があるなんて、知らなかった。
 それに、こんなに早くテストの結果が帰ってくるなら、復習もすぐにできるからうれしいのだけれど……?
 どうしたらこんなに早く結果が出るのだろう?
「…百位以内に入ってたらいいけど…」
 百位以内って、この表は百三十位以内までなんだけどな…あはは…
 そういって、たくさんの名前が書いてある表とにらめっこするみたいに、名前を探し始めた。
 私の目標は一桁。
 私たちは、自分の名前を探す。心臓の音がうるさい。
 一位は……

―――白鳥結

 え…嘘……でしょ…。何回見ても私の名前が書いてある。
「よ、よかった…」
「ん?どうしたのって…結が一位⁉」
 私は瞬きを繰り返しているすずちゃんにコクコクとうなずいた。
 上位には入ってほしいと思っていたけど、まさか一位になるとは…。
 思わぬ展開に、手が震える。
 途端に私の胸に飛び込んでくるすずちゃん。私は急で倒れそうだったけど、何とか持ちこたえた。すずちゃんはまるで自分のことみたいに、すごく喜んでくれた。
「目標達成だね。」
 そういって、きらきらと輝いている笑顔を向けてくれた。
 私たちは手を取り合って、静かに喜んだ。
「すずちゃんは何位だったの?」
 私が聞くと、途端にさっと顔を青ざめた。
「言いたくないなら無理して言わなくてもいいんだよ。」
 私、無神経なことを聞いちゃったかも…。
 誰だって、言いたくないことの二つや三つ、あるもんね。
「いや、別にいいんだけど。あはは…」
 そういって指をさしたのは、退学してしまう成績の欄に、すずちゃんの名前が書いてあった。
 私は、頭の中が真っ白になった。
 すずちゃん、退学になっちゃうってこと…⁉

「「キャーーー‼」」

 …⁉
 な、何…?この、黄色い悲鳴は。
 振り向くと、そこにはきらきらとまぶしいくらいのオーラの人たちが立っていた。
 その三人の男子がこっちに歩いてきていた。遠目からでもわかる、顔の良さ。この人たちは、二次元の人かと思う暗い顔が整っている。
 周りの女子たちは、目をハートにして叫んでいる。もちろん、男子も少し見とれてしまっているようだった。
 近くなっていくにつれ、整った顔やスタイルの良さが伝わってくる。
 私たちは、さっとその人たちが歩くであろう道を開けると、定期テストの結果のほうへと歩いて行った。
「待って、あの人…陸様じゃない⁉」
 すずちゃんが指をさしたのは三人のなかの優しそうな、朗らかな人だった。
 この学園ではこの人たちのことが人気らしい。すずちゃんもその一人のファン。
 確かに顔立ちはすごくいいし、ファンも多そう。
「もう、陸様を見れて、幸せ…。というか、陸様と同じ空気を吸っちゃった⁉きゃー、サイコー。」
 顔を赤くして、興奮しているすずちゃん。周りの女子たちも同じ反応ということは、すごく人気な人たちなのかな?
 すずちゃんが好きな陸さんは、ほかの二人と歩いている。
 三人は、じっと定期テストの結果表の名前を見ていた。
 なんとなく上位の人を見ていると思うんだけど、気のせいかな?
 そのリーダー人っぽい、少し怖いオーラをまとった人が口を開いた。
「…一位の白鳥結はどこだ。」


 へ…?
 白鳥、結…?
 ……私っ⁉
 私なにか、気に障るようなことしちゃったかなっ⁉
 でも幸い、ここにいる人たちは私のことなんて知らないから、見つけられるはずがない。
 今のうちに後ろに一歩下がって、逃げようとする。
「あ、結っ!」
 私が逃げることに気付いたすずちゃんが私の名前を呼んだ。
 一斉にみんなが、私のほうへと顔を向ける。集まった視線の中には、当然さっきの私を探していた人もいた。
 その人たち三人は、こっちに顔を向けた。
……こっちに来てる⁉
「ごめん、すずちゃんっ」
 私は思わず、逃げてしまった。
 がんばって逃げても、三人がかりでこっちを追いかけてくる。
 自信がある体力でもその人たちは私を上回る動きで追いかけてきた。
 そんなに体力と速度があるなんてっ、うらやましい…。
 そしてさっき、私の名前を読み上げた一人が近づいてきた。
「…なんで逃げた」
 その人からは、すごいオーラが漂っていた。怖いというか冷たい感じだった。そして、こっちをにらむようにして聞いてきた。
 ……っ‼
 私は怖さのあまり、目をぎゅっとつぶった。
「急にごめんね、君は白鳥結ちゃんで間違いないかな?」
 優しい声が聞こえてきて、そっとつぶっていた目を開ける。
 …陸さんだ。見た目だけじゃなく、声も優しそうな人だな。
 私はコクリとうなづく。
「仁、すこし抑えて。怖がってるから。」
 そういって、仁さん?という人を後ろに下げてくれた。
 陸さんは続けてこう言った。
「まずは自己紹介かな。俺は、生徒会の神宮寺陸。そして、仁、類だよ。」
 急に自己紹介をされて、戸惑ってしまう。
 あらためてじっくりと顔を見る。仁さんは、少し怖いけど、類さんはどんな人なんだろう。見た感じ…仁さんと同じ雰囲気だな。
 なんとなく、顔立ちが似ているから…兄弟かな?
「私に何か、用ですか…?」
 私は勇気を出して聞いてみた。もしかしたら、喧嘩かもしれないし、気を付けないと。
「ごめんね。そんなに警戒しなくても大丈夫だよ。今日は、結ちゃんにお願いをしに来たんだ。」
 お願い…?
 もしかして、カツアゲとか…⁉
 そう思って、身構える。
「首席の結ちゃんに、してほしいことあるんだ。」
「してほしいこと…?」
「そう。俺たちは今、首席が必要で…。内容は主に、俺たちの勉強を見るって言うことなんだけど…協力してくれないかな?」
 え…?
 話が急展開すぎて追いつけない。えっと…勉強を教える?私が⁉
「ええっと…ほかにも、頼める人がいるのではないかと…」
 首席じゃなくても、この顔で攻められた女子は、少なくとも、めったに断らないと思うけどな…
「は?」
 急に低い声が聞こえてきた。この声は…類さん⁉
 始めて話しかけられた言葉が「は?」なんて……あはは…
「まあまあ、無理やりじゃないけど、どうしても結ちゃんがいいんだ。結ちゃんがいいのであれば、引き受けてほしい。だめかな?」
 すごくうれしい。けど、
「…ごめんなさい。私にはそんな役、到底務まりません。」
 今の私では、到底無理だ。引き受けても、ちゃんと活躍できるかが不安で仕方ない。
 私が断ると、陸さんと類さんが驚いていた。相変わらず仁さんは、表情をピクリとも動かさない。
「あはは…断られたの、初めてだな…」
「は?この女、今断った?」
 二人とも、少し戸惑っている…?何か私、変なことしちゃったかな…?
 私には戸惑っているように見えたけど、勘違いかもしれないな…
 仁さんは、睨むような冷たい目で私を見ていた。
 陸さんはコホンと咳ばらいをして私の目をまっすぐに見た。
「結ちゃん。」
 急に陸さんから名前を呼ばれて、背筋を伸ばす。
 陸さんは、笑顔だけど、笑顔じゃない顔をする。
「仁は、こんな奴だけど、一番…」
「おい、もう行くぞ。」
 陸さんの言葉をさえぎって仁さんが言った。
 仁さんは、私に背中を向けて歩き出した。それに合わせて類さんも歩いていく。
「仁がごめんね、またね。」
 そういって仁さんのほうに行ってしまった。
 な、なんだったんだろう…
 私は、しばらく三人の背中を呆然と眺めていた。