「可愛いお洋服だね」
千代はみねの服の袖を握って、みねは怪訝そうな顔をしている。
「みねちゃんは一人でおトイレ行けるの?」
鳥肌が立った。
そしてスマホを持つ方の手が動いた瞬間、私は飛び出していた。
「明彦さんっ...!!」
「な、なに、春鹿さん」
咄嗟に手を引っ込めたから、確信した。
「ちょっと良いですか、...外に出ましょう」
この外に出る発言だけは、賢かったと言っていいだろう。
奴に荷物を押し付け、腕を掴む。
「ちーちゃん、一回でも撮ってた?」
千代が首を横に振るのをみて、少し安心。
玄関の外まで引っ張った。
「初めから、そういう目的だった...んですよね、?」
「春鹿さん、...誤解だから、」
「撮ってないですよね、家の子たちの写真」
「撮ってません、撮ってませんっ、千代ちゃんも」
はあ、と息をつく。
「それは信じます。でも、...もうお付き合いは出来ません。次あの子たちに近づいたら警察に相談しますので」
「...じゃあ、僕のことを好きじゃなかったのか?」
「では、あなたは私のことが一番好きだったのですか?」
沈黙が痛い、けど沈黙こそ時間の無駄だから。
「無理です、お引き取り下さい。お世話になりました」
帰れ、と目で促すと、そろそろと宮下明彦は帰っていった。
今後、奴は何かアクションするだろうか、しないだろうか。
私には、わからない......。


