「ん、...」
薄暗いなか、ぼんやり意識が浮上する。
手探りでポケットからスマホを取りだす。
【05:26】
.........は?
画面の明るさに顔をしかめるけど、...えっと......は?
──時刻、とは。
え、朝の5時?夜の5時?ていうかここどこ?
...私なにしてたんだっけ。
う〜、...頭痛い。
思い出した、この怠さ。
二日酔いのあれだよ。
胸焼けも凄い。
あーあ...。
「やらかした...」と体を起こして気づく。
────ここどこ。
「──起きてた?はるか...って、そんな驚く?」
背後から声がして思わず飛び上がった。
振り向くと扉で、辺りを見回せば我がホテルの一室だった。
それも、最上階のスイート。
「昨日も訊いたけど、本当に覚えてないの?」
「うーんと、え...すみません、何のことか」
「酔いが覚めてもわからないのか、はるかは、俺のこと」
覚えてるか、覚えてないかになんでここまで粘る?と警戒の目を遣る。
どこか焦っているように右の手で首の左を搔いた。
その仕草に何か既視感を覚えて────
「...っ、!!」
「───...ささざき、...ひろと、」
まだ明るい人生を信じてやまなかった、あの日の私。
明日が来るのも怖くないと笑ったあの日の彼。
何かが音を立てて動き出す感覚に心臓がどくりと鳴り。
冷たい汗が一筋、こめかみを流れた。


