片翼を君にあげる④

***

そして、1時間後ーー。

「悪かったよ、いきなり来て。
……。なぁ、ごめんって。怒るなよ」

「……怒ってないわよ」

お風呂に入って、身支度を整えて、部屋で待っててくれたツバサの元に戻って来たはいいけど……。先程の恥ずかしい姿を見られてしまった私は、なかなか顔を合わせられずにいた。
そんな私の様子に、ツバサは怒っていると勘違いしているみたい。

怒ってなんかいない。
私も会いたかったし、会いに来てくれて嬉しい。
お正月は互いにゆっくり自分の家族と過ごそう、って年末に会ったのが最後で、年が明けてからツバサは徐々に夢の配達人のお仕事を始めたから、こうして2人きりで会えたのは久し振りだ。
それなのに……。そう!久々に会えたのに!!リハビリ直後の姿を見られてしまった事にショックを隠しきれなかった。

好きな人の前では綺麗で在りたい。
と、いう複雑な女心だ。

以前、蓮華(レンカ)国でボランティア活動していた際に会った時もラフな服装に薄くお化粧をしただけだったが、あの時は全く恥ずかしいと思わなかった。普通でいられた。
それはきっと、ボランティア活動をしていた自分に誇りを持っていたからだ。

今の自分は何も持っていないーー。

毎日毎日リハビリばかりで、今も人の手を借りなくてはいけない事がたくさんある。

そんな自分が"女性らしさ"まで失ったら……?

そう考えると……。ツバサに嫌われたら、と思うと私は怖くて仕方なかった。
それに、不安になる原因はそれだけではない。

うぅ……眩しい。

直視できなくて、私はちらりと彼を見上げた。
なんだか急に大人びた気がするツバサは、ツバサなのにツバサではないように感じる。
昔から綺麗な顔立ちをしているのは知っていたが、以前は少し弟のような、可愛らしい雰囲気もあったのに……。今ではすっかり男性になったようで、彼の父親であるヴァロン様にますます似てきたように思った。

これは絶対に、女の子が放っておかないーー。

どんどん素敵に成長していくツバサは、今の自分には眩し過ぎる存在で……。私は嬉しいよりも複雑な気持ちになっていたのだった。

【次回更新は10月19日(月)です。ゆっくりで申し訳ありませんm(_ _)m】