そして、あっという間に三が日は終わってしまった。
今日は兄貴が帰ってしまう日。
「シオンに車で迎えに来てもらうんじゃないんだ?」
「ああ。たまには電車でゆっくりまったり旅行気分で帰りたい。
戻ったらまた嫌でも毎日毎日、車で送迎だからさ。車に乗ると、なんか仕事みたいで疲れるんだよな〜」
電車で帰る、という兄貴を俺は駅までお見送り。
兄貴と肩を並べて2人きりで歩くのは本当に久し振りで……。俺がふと横を見ると、それに気付いた兄貴もこちらを見て微笑った。
昔は見上げていた目線がいつの間にか同じになっていて、俺はようやく兄貴と同じ景色を見られるような気がしていた。
すると、兄貴がポツリと言った。
「……。ごめんな、ツバサ」
「!……え?」
突然の謝罪の言葉に驚いた。
予想外の言葉に目を丸くしていると、微笑みを苦笑いに変えた兄貴が気まずそうに目を逸らして口を開く。
「僕は、ずっとお前に嫉妬してた」
それ、は、兄貴がずっと隠してきた本音だった。
「父さん譲りの容姿、才能……。なんで僕じゃないんだ、ってずっと思ってた。
周りを惹きつけて、期待されるお前の事が、羨ましかった」
これまで知らなかった、初めて知る兄貴の本当の気持ち。
「……けど。父さんが事故で帰らなくなって、塞ぎ込む母さんを見た時は、心のどこかでホッとしてたんだ。「ああ、父さんに似てなくて良かった」って……」
兄貴はきっと、長い間抱えてきたその想いを懺悔したかったんだ。
だから俺に、話してくれたんだ。
「酷い兄貴だろ?お前に嫉妬してたクセに、状況が変わったら安心してたんだ。
父さんの会社の跡を継いだのも、塞ぎ込む母さんを見たくなかったからだ。
僕は……っ、逃げたんだ。卑怯者だっ……!」
兄貴はその想いを俺に話して、怒って欲しかったんだろう。責めて欲しかったんだろう。
立ち止まって、拳を握り締めて、俺を強い瞳で見つめて……歯を食いしばってた。



