「うん、大好きだよ」
俺の中で、何かが大きく変わっていた。
一度は諦めた夢の配達人への人生を、レノアと再会して、再び歩み出して……。その中で経験して学んだ全てが、成長させてくれた。
「母さんも、姉貴も、兄貴も。……もちろん、父さんの事も。大好きだ」
恥ずかしくて、いつの間にか言えなくなっていた言葉。そして想い。もう、しっかり言える。
父さんが今、この場には居ない現実を見つめても……。「父さん」と口にしても、心が痛んだり、辛くなったりしない。
そんな俺の笑顔を見て、母さんも姉貴も兄貴も微笑っていた。そして、何かを決意したように口を開く。
「何も心配せず、自分の人生を生なさい」
俺達子供の顔を1人ずつ見て、母さんが言った。
「母さんは、この家でお父さんが帰って来るのを待つわ。何年でも、何十年でも……。
でも、それは妻である私の役目であって、あなた達子供の役目じゃない」
そう俺達に告げる母さんの姿は、凛とした強い女性のようにも、恋をしている儚い女性のようにも見えた。
「それぞれの人生を生なさい。
あなた達のその姿が私の励みになるの。私もしっかり生きよう、って元気をもらえるの。
だからもう、私の事は何も心配しないで……!」
そう言った母さんは、また一段と美しく俺達の目には映ったんだ。
もちろん、俺達姉弟がその言葉通りに母さんを気にかけない、なんて無理に決まってる。大事な大事な母さんなんだから……。
でも、それぞれの人生を優先にーー。
俺達家族はそう強く心に決めて、生きる事にした。
……
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