「私、ずっと羨ましかった」
「えっ?」
「ツバサを好き、って気持ちを全面に出して、真っ直ぐに向かっていくレノアが……」
それは、今になってようやく聞く事が出来たランの本心だった。
「素直で、かっこ良くて……。"私には出来ない"、って実感した時、堪らなく悔しくて、嫉妬した」
知らなかった。
気付かなかった。
ランが抱えていた、隠していた気持ち。
「ツバサが好きになるのも、当たり前だと思ってた」
胸が、私に何かを気付かせるように優しい力で打った。
紡がれる一つ一つの言葉から、ランの想いが伝わってくる。その想いには色々なものが含まれていたけれど、これだけは分かった。
その想いには、
「ごめんね、レノア。嫌いだなんて嘘だよっ」
私を恨む気持ちは、少しも感じられなかったんだ。
「っ、……ラ……ン!」
溢れ出す涙に邪魔されながらも名前を呼んだ私に向かって、ランが微笑った。
優しい中に彼女の良さである無邪気さが溢れた、明るい、大好きな笑顔で……。
「意地悪言って、ごめんね?」
ああ、ランだ。
これが、本当の……。本物の、ランだ。
その笑顔と言葉に答えたいのに上手く言葉が出なくて、私は必死に首を横に振った。
そんな私を、ランはそっと抱き締めて言葉を続ける。
「クリスマスの……あの日の出来事に、レノアが胸を痛める事は全然ないの。
あれは、私が、自分の気持ちに負けただけ……。誰が悪い訳じゃない。私が、弱かったの」
そう言って私を宥めてくれる優しいラン。
私も、伝えなきゃいけない。感情的に放った言葉じゃなくて、素直に、しっかりと。自分の気持ちを伝えようと思った。
ようやく向き合う事が出来たこの時間を大切にしなくてはいけないーー。
ゆっくりと呼吸を整えて、ランの背に手を回すと私は口を開く。
「わた、し……ランの事が、大好き、よっ」
「うん」
ランは聞いてくれた。
「ずっ、と……ッ、ずっと!ランの気持ちに、気付かなくてっ……ごめんなさいっ」
「ううん」
そして、一つ一つ受け止めるかのように、返事をしてくれた。



