難しく考える前に、咄嗟に心が反応していた。
「ツバサだけはっ……!誰にも、ッ……。
ランにも……っ、あげたくないッ!!」
そう言って、目の前で目を見開くランよりも驚いているのは私自身だった。
ツバサだけは嫌。
誰にも渡したくなかった。
大好きな、大切な親友にでさえも、絶対に奪われたくなかった。
「っ、……ーーッ、……ごめ……な、さっ」
ランの手を振り払った際に思いっきり当たった手がジンジンと痛み出して、心も張り裂けそうで……。その痛みで少し我に返った私は、ランに頭を下げて謝った。
「ごめん、っ、なさい……!!」
謝って許される事ではない。
私は、たくさんランを傷付けた。
そして、その結果ランの命を奪ってしまった。
それなのに、私はーー……。
「私もっ……ツバサが大好きだもんッ!!」
また、ランを、傷付けるの。
それでもーー……!!
「誰にもっ、負けないッ……。
ランにもッ……負けない!!絶対にっ……負けないッ!!!!!」
この恋だけは……。
この愛だけは、絶対に譲れなかった。
……。
シンッと静まり返って、私の嗚咽混じりの乱れた呼吸だけが響いていた。
感情を爆発させた私は暫く頭がボーッとしていて、どうしたらいいのか分からなくなっていた。
すると、少ししてランが言った。
「もっと早く……聞きたかったなぁ」
そのポツリッとした呟きにようやく私が顔を上げると、ランが悲しそうな……。でも、優しい表情で微笑んでいた。
その表情を見て名前を呼びたかったけど、私が言葉を発する前にランが続ける。
「なんで、もっと早くに話せなかったんだろうね……私達。
幼馴染み。友達。……そう思いながらも、言いながらも、私達って2人きりで話せる時間、なかったもんね」
その言葉に、小さく「ぁ……」と言葉が漏れた。
そう言われて思い出す。知り合ってから何年もの月日を重ねながらも、私とランの2人だけの時間は限りなく短かった事を……。



