「私の魂をレノアの身体に宿す事で、私は生き返る事が出来るの。
つまり、私がレノアの身体を貰って、レノアとして代わりに生きるの」
「!!……」
「だから、周りの人にはレノアはそのまま生きている事になるから何にも変わらない。
大丈夫!私、上手くやるよ?レノアになり切ってちゃんと周りに怪しまれないように生きるから……。だから、何も心配しなくていい」
「っ……」
何も、心配しなくていいーー……?
私の身体をランにあげるーー……?
言われた言葉が、耳からではなく直接頭に響いてくるようだった。
確かに、ランの言う通りだ。
ランが私の身体で生きるのならば、周りの人には私が生きているように見える。普通の人ならば疑わない。身体がそのままで、中の魂だけ入れ替わってる、なんて馬鹿げた考えはしないだろう。
それに……。
直接手をかけた訳ではないが、ランの死は元を辿れば私が原因。
私がいなければ……。
私がツバサと出逢って、恋に落ちなければ……。ランは、傷付く事はなかったのだ。
そう、思った。
「ね?レノア、いいでしょ?」
そう、思って、"いた"。
ーー……けど!!
「ツバサを、私にちょうだい」
「っ、嫌ッ……!!!!!」
私は、胸のブローチを奪おうとしたランの手を、思いっきり振り払った。
"それだけ"は絶対に嫌だった。
心の底から奪われたくない!!と、私の全てが悲鳴をあげた。
幼い子供が癇癪を起こしたかのように心臓がバクバクして、身体が熱い。涙が自然と溢れ出して、呼吸が乱れた。
そして私は、胸のブローチを両手で握り締めながらランに向かって首を横に思いっきり振った。
「っ、……ッ!……ゃ」
上手く言葉が出ない。
「ッ、っ……い、……や!」
必死に呼吸を整えながら、涙でボヤける視界にランを映した。
そして、言った。
「ツバサだけ、はっ……絶対に、嫌ッ!!!」
ツバサだけは、絶対に嫌ーー。
"それ"は、私が、絶対に譲れないものだった。



