片翼を君にあげる④


ツバサ(愛する者)と幸せになれーー。

消える寸前に見た彼の笑顔は、そう、言っているかのような笑顔だった。

ーー……。

目の前の()は消えてしまった。
けれど、その光は私の胸の中に灯ったような気がした。

……っ。
私……行かなきゃ!

涙を拭って、拳を握り締めて、私は走り出した。

っ、戻らなきゃ……!

この色のない世界から抜け出す為に。

生きなきゃ……!!

自分を待っていてくれる人の為に、もう一度前を向いた。
家族、友達、そして愛する人(ツバサ)の為に……。

ーーううん、違う。
私が、逢いたいの。私が……自分が、今、誰よりもツバサに逢いたいの!!

さっきまでの自分は、なんて愚かな事を考えていたのだろう、と後悔した。

死んでも何も変わらない。
それはただ逃げているだけ。
ランの為なんかじゃなくて、自分が苦しみから解放されたいだけだった。

『俺は、立ち止まったりしない』

塞ぎ込む私にツバサが言ってくれた言葉が、心の中に木霊する。

『俺は、真っ直ぐに進む。
この下剋上を成功させて、全てのバッジを手にして、お前を護る。約束を果たす』

その言葉を思い出して、胸が熱くなる。

『全てが終わったら……。
いや、必ず全てを終わらせてまた来る。必ずお前を迎えに来る。
だから、それまで待ってて?レノア』

ーー……逢いたい!!

ようやく、自分を取り戻した気がしていた。
本当の私は、待っているだけの大人しいお姫様なんかじゃない。そんなのは性に合わない。
自らの意志で、自分の脚で、私は私が決めた人生(みち)を真っ直ぐに進むの。

愛する人(ツバサ)の元に戻る光の方へ向かって走る私。
そんな私に、最後の試練が訪れる……。

「ーー……待って。レノア」

「!!……っ」

呼び止める声に、私は足を止められずにはいられなかった。
大好きな、大切な、親友の声……。振り向くと、そこに居たのは、真っ白なワンピースに身を包んだ裸足のランだった。

【今回は1ページ更新です💦すみませんm(_ _)m】