名前を、呼ばれた気がした。
ハッとして目を開けると、そこは灰色で何もない空間だった。

私、死んだのかなーー……?

そう、思った。


変だな。
昔だったら、嫌だ!って思ったり、怖がったりしていたと思う。

けど、今は……。
もう、いいかな、って。
大切な大切な友達を傷付けて失ってしまった自分には、もう生きている価値なんてないと思った。

私の命を捧げても、ランは還って来ない。
そんな風に思っても、そんな事をしても、何の意味を持たない事は分かってる。

でも、思わずにはいられないの。
考えずにはいられないの。
今更気付いても、今更後悔しても遅いけど、ランと同じ苦しみや辛さを自分も受けなくては気が済まなかった。


灰色の空間で、私は両膝と両手の平を地面に着けて俯いた。
こんなものを流しても無意味なのに、と思いながら、瞳から溢れた涙が頬を伝ってポツリッと手の甲に落ちるのを、ただ見ていた。

するとーー……。

「!!……ッ?」

視界に裸足の両足が見えて、誰かが自分の前に立って居るのだと分かった私は勢い良く顔を上げた。そこに居たのは……。

「っ、ラン……!」

今、誰よりも会いたかった人。

涙が止めどなく溢れてくる。
その姿を、その表情を、しっかりと見つめて話したいのに視界は歪み、言葉も喉で詰まったかのように上手く出て来ない。

もしもここが死に続く場所ならば、私も一緒に連れて行ってーー……。

出ない言葉のかわりに、必死にランに手を伸ばして心の中でそう叫んだ。

しかし、そんな私にランはくるっと背を向けると、そのまま走り出して離れて行ってしまう。

「っーー……ま、……てッ」

私は力を振り絞ってなんとか立ち上がると、言う事を聞いてくれない重い足を引きずるようにしてランを追おうとした。

「ま、……って!
まっ……ッーー……ま、っ……て!ランッ!!!」

ようやく私の口から大きな声が出た。
灰色の空間に「ラン」って呼んだ私の声が木霊すると、パァッと眩い光が目の前に放たれて、私は思わず目を閉じた。

ーー……逃げないで。

同時に、その言葉が胸の中に響いた。
ランの、声、だった。


【カメ更新に関わらず読んで下さっている皆様、本当にありがとうございますm(_ _)m
GWは仕事が多忙な為、もしかしたら次回更新は一週後の5月16日(金)になるかも知れません。
ご迷惑をお掛けしますが、ご理解、ご了承をお願い致します。☆リサーナ☆】