ーー……しかし。
始まりの場所は、終わりの場所へと変わる。
たくさんの想い出が詰まった原っぱへ何とか辿り着くと、少し離れた場所へ愛おしい後ろ姿を見付けた。
心が喜びで満ちる。
生きていた。
もう一度、会う事が出来た。
胸が熱くなり、その熱が瞳から涙となって溢れる。
私は、堪らなくなって彼女の名前を呼んだ。
琴李ーー……!!
「琴李ーーッ!!」
ーー……だが。
彼女に、私の言葉は届かない。
私の心の声と同時に、背後から彼女の名前を呼ぶ声に、心がグッと握られたかのように痛む。
実際に琴李を呼んだのは、あの男だ。彼女の幼馴染みの男、聖。
そして、その呼び掛けに振り返る琴李を……。
いや。彼女の膨らんだお腹を見て、私の心がシンッとなると同時に、涙も引っ込んだ。
一瞬で全てを悟って、目の前が色のない、灰色の世界へと変わる。
そしてそんな私の耳に、二人の仲睦まじい会話だけがクリアに入ってくるんだ。
「そんな身体で出歩くな。もうすぐ産月なんだぞ?」
「ごめんなさい、聖。ちょっとお散歩したかったのよ。
迎えに来てくれたのね!ありがとうっ」
彼女に駆け寄り、身体を労わるように肩を抱く聖。
琴李はそんな彼を、とても可愛らしい笑顔で見上げていた。
そんな、幸せそうに寄り添う二人を見て……私は、"良かった"とは思えなかった。
彼女にもう一度会いたかった。
彼女の笑顔が、もう一度見たかった。
彼女が幸せならは……それでいいと、思っていた。
……。
……、……けど。
……っ、……けど、ッ…………。
けど、っ……違う!!
ッ……違ったんだッ!!!!!
ーー……
静かな心に、天使の囁きが聴こえた。
私は、そんなに、綺麗ではなかったーー……。
ポツリッ、と。
すぐに消える、声だった。
……
…………。



