片翼を君にあげる④


それは、琴李(ことり)と出逢って数ヶ月経ったある日の事だった。

彼女が、いつもの場所に来なかったーー。

ちょうどこの頃から、よく天界を出て人間界へ行く天使を注意する者の目が厳しくなって来ていた。そんな中、なんとか隙を見て抜け出して来たというのに……、……。

何時間経っても、どれだけ待っていても……。琴李(ことり)は姿を現さなかった。
遅れて来る事や早く帰宅する事はしばしばあっても、全く来てくれないと言うのはこの日が初めてで……。天使の心は酷く動揺していた。

嫌われたのだろうか?
昨日、何かしてしまっただろうか?
やはり、普通とは違うこの容姿がいけないのだろうか?

そう思う天使の感情は、昔の俺とよく似ていると思った。
……いや、人と変わらないと思った。嫌われる事を恐れて不安がるこの感情は、分かり過ぎて辛かった。

天使も人も、変わらないーー。

そして俺はこの後も、天使の心をまさに身を持って知る度にそう感じてしまうんだ。

……
…………。

数日経っても琴李(ことり)と会えない日が続いて、俺は天使の心に導かれるままに彼女の住む村へと足を進めた。

天使の能力(ちから)を持ってすればわざわざ村に行かずとも、彼女がとんな様子で居るのか探る事は容易い筈だった。
それでも自ら足を運ぶ天使の行動からも、どれ程に琴李(ことり)を想い、会いたいと願っていたのかが分かる。

彼女以外の人間には見付からないよう能力(ちから)で透明になって、一軒一軒を回った。
すると、村で1番大きな……おそらくこの村の長の物であろう家の一室に、ようやく探し求めていた姿を見付けた。

胸がドクッと、跳ねるーー。

しかし、それは再会を喜んだ暖かいものではなかった。
胸に走った衝撃は、哀しみ。
畳の上に敷かれた布団の中で、青白い顔で眠る琴李(ことり)の姿を見て、心から全身も冷えて行った。

【今回の更新は1ページでごめんなさい🙏
仕事が落ち着くまでカメ更新が続きますが、必ず完結させます。
ゆっくりになりますがお待ち頂けたら幸いです🙇‍♀️】