<洋ナシ>サンタのX'mas

「ベリー!ルベリー!」


工事長は彼の話を遮るように、つかつかと建物の端迄行くと大きなドアをバタンと開けた。

瞬間、ビクンッと大きな背中が弾けて、一人の男がニヘラッと笑った。

赤髪の巻き毛とダボダボのパンツ。

歳はペィラよりは幾分上には見えたが、そのだらしない笑顔は妙にカンに障った。


「はい、工場長殿!何でございましょうか!」


揉み手をしながら寄ってくるルベリーに、工場長だけでなくペィラも顔をしかめた。

慇懃無礼という言葉を知ってるんだろうかと、ペィラは男を見上げた。

ニメートル近くあるだろうか、ペィラの視線はぐんと顎を上げなければ彼の顔まで届かない。

工場長はゴホンと咳ばらいをすると、ペィラをちらりと見た。


「新人だ。クローズ様への挨拶が終わったら、お前がここで面倒見ろ。分かったな。」

「かしこまりぃでございます。」


工場長は露骨に嫌な顔をすると出ていってしまった。

ペィラは、残された四角い殺風景な部屋を見回した。

扉は二枚。

一枚はさっき通った生産ラインに続く扉。

対面にあるもう一枚は、それよりも倍程大きい。

小さい扉側の左右の壁には、ぽかりと四角い穴が開き、そこから動くテーブルが飛び出している。


「おい、お前もグリーンなのか。」


ヘラヘラ男は小ばかにしたように言った。

お前もってことは、お前自身はどうなんだと、男の態度にむっとしたが、そもそも”グリーン”の意味が分からない。


「どういう意味なんだ、その、グリーンって。」


すると彼は、

なんだって?!

と言わんばかりに、大袈裟に両手を開く。

面倒なので構わず、ペィラは説明を待った。


「グリーンは子供のココロを失った大人。つまんない奴ってことらしいぜ。もしくは、大事なもんを大切にしなかった奴。」

「?それはどういう・・」


リン♪リン♪

突然、天窓からブワッと突風が吹き込み、雪がペィラを覆った。

さらに何かがばさばさと頭目掛けて降ってくる。


「うわっ!ぷ!」

「あー・・あんまりそこにいると危ないぞ。」

「そういうことは、早く言ってくれないか?!」