<洋ナシ>サンタのX'mas

工場と呼ばれたそこは、端から端が見えないほどドデカく、長い建物だった。

ジリリリリリン♪

ガッチャン・ドン・パン♪

小気味良いリズムで機械が動き、長い長いベルトコンベアが巨大なタワーへと流れている。

その周りでは、幾人もの職人たちが工具を手にして、めまぐるしい速さでおもちゃを組み立てていた。


ベルが鳴るたび流れてくるのは、世界各地から届いてくる子供達のオーダーなのだと工場長が説明した。

が、ペィラはほとんど上の空だった。

彼に続いてベルトコンベアの脇を歩きながら、ペィラは何度もブリーの言葉を反芻していた。


私は、死んだのか。


なぜだか、ピンと来なかった。

特に悲しくも、せつなくもない。

人の死というのは、こんなにもあっけないものなのだろうか。


「ミスター・ペィラー。聞いてるかね?」

「えっ?は、はぁ。」


工場長は八の字に広がった、太く茶色い髭を右手でさすりながら、ペィラをジロリとにらんだ。

ペィラは背中をしゃきんと伸ばし、ずれたサスペンダーを正した。

どうも、あまりにも似すぎていて気まずかった。

工場長は、上司のビリー・ハドソンそっくりだ。

あの世に来てまで、"ビリー"のお説教をくらうなんて思わなかったと、ペィラは苦虫を噛み潰した。


「さて。君の仕事だが。君は何か特技はあるかね。」

「いいえ、特に・・。」

「趣味は?」

「いえ・・。」

「休日は何をして過ごしていたんだ。」

「仕事です。休みなんて、なかったですから。」

「じゃあ、子供とは何をして遊んでいた?家族を楽しませるには何をしていた?」

「・・・そういうのは、妻の役割ですから。」


ハァ、と工場長はうんざりしたような吐息を漏らした。


「まったく。立派なグリーンじゃないか!いや、むしろ色なんてないくらいだ。なんでこの忙しい時に、君なんぞを・・・。」

「あの。」

「・・何だね!」

「私の名前なんですが、ペィラーではなくペィラ、語尾は伸ばさないんです。間違えて梨みたいに聞こえちゃうじゃないですか、あれがどうも・・・」