<洋ナシ>サンタのX'mas

白髪交じりのグレーの体をのそりと動かし、ブリリアントと呼ばれたトナカイはペィラをくわえた。

大きいがゴツゴツと痩せ気味の、お世辞にも力強そうには見えない背中の上に、彼をひょいと乗せる。


「ブリリアント、ありがとう。」

「・・・・・そう呼ぶのはお前だけだ。ブリーでいい。」

「あたしだけじゃないわ。」

「・・・・・こいつを工場に連れて行く。お前がクローズ様のところへ案内してやってくれ。」

「あたし、先に行って準備してくるわ。ありがとう、ブリリアント!」


フン、と老いたトナカイは鼻を鳴らした。


「・・・そんな名前、とうに捨てたんだよ、メグ。」


ブリーは彼を乗せ、後ろ足を蹴った。

広場を少し旋回してスピードを上げると、風を切り、雪を散らし、時に乗って空へと上昇した。

屋根の少し上の宙を、カツンカツンと蹄を鳴らしてく。

駆けるのは気持ちがいい。


そういえば、人を乗せて走ったのは、一体いつぶりだろうか・・・


ちらりと背後を振り返り、うっかり感傷めいてしまった自分を嘲笑った。


「ばかなコトを・・・」

「スゴイ!空を、飛んでるぞ!」


びっくりして振り返ると、死に掛けてた男が目をむいて眼下に夢中になっていた。


「トナカイが飛んでる!!」


興奮したペィラと目が合って、ブリーは面倒臭そうに顔をそらした。


「死ななかったようだな。」

「おい、おい!この国じゃトナカイは飛んで暮らすのか?」


素っ頓狂な問いかけに、ブリーは呆れて口を開けた。


「・・・そんなわけないだろう。」

「これはやっぱり夢なのか。まさか居眠りして?たしか地下鉄に乗ったはずだ。そう、商談に必要な書類を家に忘れて、そして・・・そして。おかしいな、それからのことが思い出せない。」


ブリーは長いため息をついた。


「あんたは、死んだんだよ。あっちの世界ではな。」