キン…ッ


目を開けると、

そこは、白い白い世界だった。

耳を澄ますと、空気がかすかに震えるのが分かる。

氷がどこかで生まれてる。

ぼんやりとしたココロが、なんとなくそう呟いた。


頬に触れるキリキリとした冷たい風と、

バサバサッと雪が頭に落ちてきた衝撃で、彼はハッと我に返った。


どこだ、ここは?!


首が千切れんばかりに辺りを見回す。

樹氷の森に、どこまでも白い道。

彼は慌てて小高い場所を探した・・が、ちょうどよい場所はない。

仕方なく、革カバンを置き、小さめの木にしがみついた。

小柄な身体に、ぽっちゃりした下半身、短めの手足。

何度も滑り落ちながら、なんとか先を見渡せるところまで顔を出し、彼はあんぐりと口を開けた。


何なんだ!!

会社は?大事な商談・・客先は?!みんなどこに行ったんだ。

一体、何がどうしたっていうんだ!!!


彼の視線の向こうには。

オフィスビルなんてひとつもない。

それはまるで絵本のよう。

レンガ造りのタイルにかまぼこ型の窓、

つんと円錐型の屋根を乗っけた家が並び、ほわほわと煙をたてている。

そしてその先には、驚くほど巨大なクリスマスツリーが、でん!とそびえている。


状況が受け止め切れなくて、何度も瞼をゴシゴシとこすった。

けれど、顔が真っ赤になっただけ。

彼は、ごちゃごちゃと、カラフルな色が飛び交う、おもちゃの町を見つめて呆然とした。


「ああ、またボスに怒られる・・・」


異世界を目の前にしてるというのに。

出てきたのは、なんともペィラ・グリーンらしい情けない言葉だった。