月夜の約束

~第六章~
 私は早朝に目を覚まし、あの場所へと向かった。オープンは十時ジャスト。そろそろ扉が開く時間だ。今回の施設調査は私一人。人数が多ければ怪しまれる可能性があるからだ。かといって一人で行くってあいつらに伝えたら、絶対に文句を言うだろうから黙ってきた。黙ってきたはずなのに・・・・
「早いなー、月乃。」
「「おはよー。」」
(なんであいつらがいるんだ!)
「・・・」
「おい無視すんなよ(笑)。」
「…な・ん・で・あんたたちがいんだよ。」
「あーそれか。それは・・・。」
斎藤が言うには「た・ま・た・ま」らしい。
「・・・はぁ、お前らは帰りな。これは相当危険な行為なの。わかってる?決して怪しまれるような行動はできない。複数人で動くのは危険なんだよ。」
「わかってる。でもさ、言うじゃん。赤信号、みんなで渡れば怖くない。って。」
「?」
「危険な行為でも、みんなで実行すれば罪悪感が減るだろ?」
「いや、まぁ、そうなんだけどさ・・・。」
斎藤に丸め込まれ、結局全員で調査に向かうこととなってしまった。
「非常口は各階に八つか。八方位にそれぞれしっかりと設置されているな。」
「うわぁー、広れ~!」
あいつらはしゃいでいやがる。
(巻くなら今のうちだな・・・。)
「とりあえず一階の北側から調べるか。あいつらが他のものに目を奪われているうちに・・・。」
私はひっそりと退散した。
(ふぅ、巻けた・・・。)
 館内一階北西部、メインのブースは『保険の入口』。通路にはベンチや針葉樹も多い。ここは老人たちの憩いの場かな。次行ってみるか。
 とりあえず一階から六階まで調べ上げた。このデパートの完全閉店時間は午後九時。一番バレにくい場所は今段階、二階南西部。分かれ道が多く、警備員に見つかったとしても巻ける確率が高い。加えて近くに階段とエスカレーターがあるため、二手にも分かれやすい。
(少し疲れた、五分休憩しよう・・・。)
私は近くにあったベンチに腰を掛けた。
(よくみると、確かに何でも売っているな。雑貨から調理器具、腕時計やら宝石まで。飽きがないな。)
私はふと疑問に思った。

—どうして〈月の子〉なんてこの世に現れたのだろう—

「・・・会えるのを楽しみに待ってるね・・・。」
・・・誰⁉すぐに振り返るも誰もいない。他の客たちは何もなかったような顔をして、驚く私を不思議そうに見ている。
(き、気のせいか・・・?)
トントン。
・・・⁉
「どうしたの?そんな驚いて。」
「なんだ、日野さんか。」
「何かあった?」
「いや、何でもない。てか、よくここがわかったね。」
「たまたまだよ。振り返ったら月乃さんいなくて本当に驚いたんだから。」
「巻くなら今だなって。」
「あはは、やっぱりそっかー。」
「あれ?あいつらは?」
「春樹君たちなら別行動だよ。二手に分かれて探してたから。合流しよっか。」
日野さんに促されるまま二人と合流した。
「おい、俺たちを何度も巻くなよ(笑)。」
「気づかないのが悪い。デパートごときであんなにはしゃいでる奴がいたら目立つだろ。」
「それはすんませんでした。」
「わかればよろしい。とりあえず六階までは調べ終えた。残りも今日中に調べ上げたい。」
「じゃあペアになって一か所ずつ担当しようぜ。最上階は全員で調べ上げるでどうだ?」
「悪くないね。調べ終わったら九階レストラン『RAMONA』前に集合で。」
「「はーい。」」
 私と日野さんが七階、斎藤と宇野さんが八階を担当した。

七階・・・
「ここは子供商品が多いねー。ア〇パ〇マンとか、プ〇キュ〇とか・・・。」
「確かにゲーセンとかもあるから巻きやすい階ではある。けど高層階にはなるから、警備が手厚くて捕まる可能性も高い・・・。」
「すごい、そこまで考えてるなんて・・・。」
「私が言い出しっぺだから、私がちゃんとしないとね。」
「すごいね、目標のためにそこまで頑張れるなんて。私にはまだ無理だなぁ。」
「日野さんは何か夢とか目標って持ってるの?」
「あるよ。笑われちゃうかもしれないけどさ、役者になりたいんだよね。」
「⁉…そうなんだ。」
「やっぱり無理だと思った?」
「ううん、ただ、驚いた、だけ・・・。」
「もし、わたしがホントに役者になれたら、公演見に来てくれる?」
「う、うん・・・。」
(日野さんも、なんだ・・・。)
八階・・・
「ぶっちゃけさー、気になんね?」
「なにがー?」
「月乃の叶えたいこと。」
「まあね、気になるか気にならないかで言ったら、そりゃ気になる一択っしょ。」
「だよなー。」
「とりあえずさっさと片付けよう、このフロア。」
「だな。」

レストラン『RAMONA』前・・・
「やっぱり私たちの方が先か。」
「二人ともまだかなー。」
五分後。二人がやってきた。
「待たせたなー。」
「おまたー。」
調査結果を共有するために4人でレストランに入店した。
「どうだった?」
「八階は正直なしだな。映画館とか、百均とか、一つ一つの店舗がでかすぎて、店中に入れないと考えると、正直隠れ場はないな。そっちは?」
「ゲーセンがあったから、正直隠れやすさはしっかりしているかな。服屋とは違って、ゲーセンはロープとかで規制されているから、中に隠れられるし。」
「じゃあ、七階にするか。」
「…上の階に行けば行くほど警備も手厚くなるからそれは危険な気がする。」
「?でも結局目指すのは屋上だろ?それなら初めから上の階にいた方がいいだろ?」
「確かに・・・目的地、忘れてた・・・。」
「じゃあ決まりだな。」
「「賛成~‼」」
「・・・そういえば、脱出方法はどうするんだ?」
「あぁ、それならもう決まっているよ。非常口を有効活用するんだ。」