白猫さんは甘党男子

 混乱する私をよそに、白猫さんは表情を変えずに『保健室まで連れてくのが面倒だったから』と答えた。白猫さんはめんどくさがりらしい。

「あの、これいつまでやってるんですか.....膝枕....」

 私が聞いても白猫さんは、スマホ画面に夢中なのか答えを返してはくれなかった。私は諦めて、しばらくこのままの状態でいることにする。
 膝枕。はものとしては知っていたけれど、まさか実際に自分がされる側になるとは思わなかった。しかも、美形男子に。私はボーッと白さんの様子を眺める。相変わらずスマホに夢中で、こちらのことを見る素振りもない。見とれてしまうほど整った顔と綺麗な長い髪。それとは反対に、身体つきはがっしりしているからやっぱり男性なんだと思わされる。

「なんだ起きてたのか.....もう大丈夫なわけ?」
 
 いや、ずっと起きたんだけどな。なんならさっき一回声かけたし。私は起き上がって隣に座った。そんな私に、白猫さんは棒付きキャンディーを一つ差し出した。

「食べなよ。さっき倒れたの低血糖かもよ」

 白猫さんは低い声でそう言ってから、ポケットからもう一つ棒付きキャンディを出して食べ始めた。私は白猫さんからもらったキャンディを食べながら、屋上から見える景色をボーッと眺める。時々秋の涼しい風が抜けていって、白猫さんの長い髪をゆらしている。

「五限出るのめんどくせー......」

 白猫さんはキャンデーを食べ終えてコンクリートの地面に横になっていた。

「あの、ほんとにありがとうございました。だいぶ良くなりました」

 白猫さんはこちらを振り向いてはくれなかった。私は屋上の出入り口を開けて教室へ向う。

「そういえば、本来の目的忘れてない?名前また聞き損ねちゃったな」

 こうして話をするまでは、一昨日のナンパ男みたいに凄く乱暴な人なのかと思っていたけれど、ここにいるからといって全員がそうではないらしい。

「もしかしたら本当に幸運を運んでくれたりして?」

 ここに来てから、正直毎日が憂鬱だった。でもあの人に助けられたおかげで、私の中で何かが確実に変わりはじめていた。

「屋上に行けば、また会えるのかな。楽しみ」