さよなら流星群





りゅう座流星群、というらしい。

遠くから絶えず聞こえてくる楽しそうな声はきっと、流星群を見に、家族や恋人と河川敷に来た人たちのもの。
そんな世界で、わたしは今、なにをやっているんだろう、と思う。

ぼやけた視界で呆然と足元の草を見つめ続ける、場違いなわたしの横で、能天気な幼馴染は言った。

「みてみて結羽、お星さまがふってるよ。宝石みたいできれいだねぇ」

当然のことながら無視するわたしを気にも留めていない様子で、花生は「すごい、きれい」とはしゃいでいる。

ふと、川沿いを並んで歩く、姉妹の姿が目に入った。
ジュースのようなものが入った袋を下げて、わたしと同じくらいの女の子と手をつないで笑っている、中学生くらいのお姉さん。

ああ、お姉ちゃんも、あんなふうにわたしと手をつないで歩いてくれたな。
やさしくて、いつもわたしを優先してくれて、けんかしてもすぐに自分から謝ってくれたお姉ちゃん。
わがままなわたしは、そんなお姉ちゃんに、ずっと甘えっぱなしだった。

ありがとうも、ごめんなさいも、最後まで言えなかった。

また、視界がにじんでいく。
うつむくともう止まらなくなって、涙で濡れていく服もよく見えなくなる。
言葉にならない嗚咽が漏れて、体が震える。

必死にこらえようと手のひらを握りしめたとき、相変わらず能天気な幼馴染は、呟くように「だいじょうぶだよ」と言った。

何も考えていないような花生の言葉にいらいらして、彼を睨みつけようと顔を上げた瞬間、わたしは息をのんだ。

吸い込まれるような深い暗闇の中を、無数に降り続ける星たち。
そのひとつひとつが、彼の言う通り、まるで宝石のようにキラキラと輝いている。
その中心でわたしの幼馴染は、風を受けるように立ってすっと前を見据えていた。

この光景を、ずっと見ていたい、と思った。

花生はわたしの方を見ないまま、言葉を続ける。

「結羽のお姉ちゃんはすぐに落ちちゃうお星さまじゃなくて、もっとずっと大きくてきれいなお月さまになって、結羽のことみまもってるよ」

真面目な顔で「お星さま」なんて言うもんだから、わたしは思わず笑ってしまった。

「……もしわたしがまたこんなふうに辛くなっても、花生はとなりでそう言ってくれる?」

「あたりまえだよ。……おれね、大きくなったら結羽とけっこんするんだ」

自分で言ったくせに、花生は照れたように顔を赤くした。

「この流星群がつぎにみられるのは、13年後なんだって。そのときにまた、ここで一緒に星をみよう」

13年後。途方もない未来にも思えるけど、少なくともそのときまで花生が隣にいてくれるんだと思うと、少しだけ、気持ちが和らいだように感じる。

「そしたら、おれから告白する」

告白、という言葉に、心臓が小さくはねた。
バカで能天気な幼馴染は、いつの間にこんなに大人っぽくなっていたんだろう。

わたしはどきどきする胸をそっと抑えながら、花生に向かって小指を差し出す。

「約束だからね」

花生は目を見開いて、それから嬉しそうに目を細めた。
本当に、感情のわかりやすい幼馴染だ。

「うん、約束」

星の降る世界で、わたしたちは小指を絡めた。




*************************************





あの日、涙の向こうにいたきみは、星のように輝いていた。

降りやまない無数の星は今でも目に焼き付いていて、あの日の光景を思い出させる。

ねぇ、幼いころの約束は、いつまで有効ですか?






**************************************