順調に坂を下っていたのに、次の瞬間、天と地がひっくり返り、私は草の上に投げ出された。
私は、草の上に仰向けになり、大の字になっていた。あまりに一瞬の出来事で何が起きたかわからなかった。が、気がついたら、2人が私を心配そうに覗き込んでいた。私の視界、透き通るような青空と、巻層雲と、2人の顔。

私は、やっと今起きた出来事を理解し、同時に泣き出した。草の上で仰向けのまま、顔を掌で覆ってぽろぽろ泣いた。
「ごめん……」
悪くないのに亮ちゃんが、横でか細い声を出す。
「ばーか」
航平が亮ちゃんの頭をべしん!って叩く。
亮ちゃんは俯いたままで。
起き上がって、私も俯いて言う。「私が言ったの。亮ちゃんは、悪くない……。」
航平が私の額にコツン、ってデコピンをした。



捻挫して歩けなかった私を亮ちゃんがおんぶしてくれて、亮ちゃんの自転車を航平が押して帰った。
その時は、お父さんにこっぴどく叱られて、亮ちゃんだけが悪いわけじゃないのに、亮ちゃんは泣きながら私に謝った。
巻き込まれて一緒に怒られた航平はお前らバカだなーって笑ってて、泣いてる亮ちゃんのほっぺの傷をツンツンってする。

「痛ぇよ、触んな」

航平は、「絆創膏貼ってもらえよ」って言って帰ってった。

私は亮ちゃんのほっぺに絆創膏貼りながら、「怒られちゃったね」って笑う。
亮ちゃんは、また、ごめん…って口を尖らせるから、亮ちゃんだけが悪いんじゃないよ、って言う。

ある夏の夕方、傾いた太陽が俯いた亮ちゃんの横顔を照らしていた。