ファースト・ラブ




放課後、家庭科室に文化祭のクラスの物品を取りに行く。
2年2組の物品を目の前に立ち尽くす。やばい。量が多すぎる。
両手でいっぱいに物品を持つ。一人で来るんじゃなかった。かろうじて持てたけど、これ教室まで持っていけるかな。腕がちぎれそう。重い。


両手が塞がってドアを開けられず、家庭科室の入口で悪戦苦闘していると、ガラ!って家庭科室のドアが開いた。


「わあ!」
「ああ!」
ドアを開けたその人も、私の声にびっくりしてほぼ同時に声をあげる。


「え…あ…水色…。大丈夫?」
「あ、先輩。」
俊先輩が、私の手から荷物を半分以上とる。


「わ。腕赤くなっちゃってんじゃん。こんなにいっぱいあるのに女の子一人で取りに行かせるなよ。な?」


俊先輩が、そのまま家庭科室を出ようとする。



「…あ!名簿に名前書いてない!」


引き返して、物品を持ち出した時に書く名簿に名前を記入する。


先輩が、隣からそれを覗き込む。
「”水野”…あ、だから靴紐、水色なの?」
「そうです。」


「なんて読むの?」俊先輩が、”日葵”を指さす。
「”ひまり”です。」
「へえ~ひまりって読むんだぁ。可愛いね。」
あ…。男の人に、そんなこと言われるの初めてだった。