文化祭が終わって1週間。
2時間目は、理科。

今日は、前、俊先輩とすれ違ったときの時間割といっしょ。

だけど、渡り廊下に俊先輩の姿はない。

クラスに戻っても、隣の教室に俊先輩はいなくて。文化祭準備のあの日々が、ひどく懐かしく感じる。物理的に俊先輩と離れて、心理的にも距離ができた気がした。
あれから、接点がなくなって、話す機会はおろか顔を合わす機会もない。

ミカに教科書で頭を小突かれる。
「そんなに気になるならさ、もう教室行って聞いてみれば?俊先輩彼女いますか〜?って」

「ねえ声でかいって!そんなことできる訳ないでしょ。」

「じゃあ私が聞きに行ってあげようか?」

「いいって!そういうんじゃないから。」

「そういうんじゃないって、だったら何?好きなんでしょ?」

「好きだけど、付き合えるなんて思ってないし。」

「なんで?」

「好きでいられるだけでいいの!」

「何それ、わかんない。この人と付き合いたい!私のことだけ見て欲しい!って思うのが好きって気持ちじゃないの?」

ユイが、うんうんって頷く。「私はわかるよ、ひまの気持ち。好きでいられるだけで幸せになる時あるよね。ひまは俊先輩のこと、すっごく好きなんだね〜」ってニコって笑う。

「うん。」
教科書をギュッて抱えた。