後夜祭の開幕式のため、体育館に向かう廊下でひとりで歩いてると、後ろからぱたぱた足音がして、横で止まった。

俊先輩だった。

「聞こえた?」

って笑う。

なんのことだろう、と一瞬考えを巡らせて、気づいた。
さっき、ソロパートのあとに男の人の叫んだ声が聞こえた。

「あれ、俊先輩だったんですか?」

うん、って俊先輩が目を輝かせる。
「うわ、良かった〜。ちゃんと聞こえてた!慣れないことしたからめっちゃ緊張した。笑」

「須藤に連れてかれて観に行ったんだけど、」

「そっか、綾先輩見に来たんですね。」

「うん。そしたらなんか感動しちゃって。俺気づいたら気づいたら叫んでた。水野〜!って。」

えっ、今、なんて。

俊先輩は、私に構わず話続ける。

俊先輩、水野って、いま…

俊先輩に名前で、初めて、呼ばれた。

胸が、きゅん、ってする。

あ、私。
この人が好きだ。