Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜

 田代はシンプルな白いトレイにティーポットとカップを載せ、ソファの前のローテーブルにそっと運んだ。温かいハーブの香りがふわりと漂う。

「どうぞ」と言い、想乃の目の前にカップが置かれた。

 田代が注いだハーブティーは、透き通った琥珀色をしていた。湯気とともに、ほのかに甘く爽やかな香りが立ちのぼる。

 カップをそっと持ち上げ、口元へ運んだ。唇に触れた瞬間、じわりとした温かさが伝わり、ひと口含むと、やわらかな香りが舌の上で広がった。

 身体の奥から静かに温められ、ふっと力が抜ける。

「美味しい……」

 ぽつりとこぼれた言葉に、田代は優しく微笑み、想乃の斜向かいに座った。「クッキーもありますからね」と皿に並べたお菓子も勧めてくれる。

 想乃は頷き、カップに目を落とした。両手でハーブティーの温もりを包みながら、あの日、穂花と喫茶店で過ごした時間を思い出していた。

 心の中に、ひとつの疑念が浮かび上がる。

 あのとき……穂花と向かい合って座り、コーヒーを飲んでいると、急な眠気に襲われた。そのまま意識を失い、次に目を覚ますとラブホテルに連れ込まれていた。

 事件後、パトカーの中での聞き取りでも、そう供述した。