想乃は郷の様子を見て、ほっと安堵した。
夕食のプラケースや割り箸をキッチンで片付けていると、不意に郷の声がした。
「学校の帰り……水沢さんに聞いたんだけど。慧弥さんが姉ちゃんを心配して、ここに一時避難してるんでしょ?」
想乃はビニール袋の封を閉め、顔を上げる。「うん」と静かに頷く。
「俺、姉ちゃんが危ない目に遭ってたなんて、全然知らなかった……相当やばかったことは聞いて、ぞっとした」
冷蔵庫に手を伸ばし、想乃は二人分のお茶をグラスに注いだ。白いトレイに載せて、郷が座るソファまで運ぶ。大理石のローテーブルにグラスを置くと、郷が「ありがとう」と笑みを浮かべた。
「……慧弥さん、怖いんだろうな。姉ちゃんが、自分の知らないところで、死んでしまうかもしれないって」
想乃の眉が頼りなく下がった。郷の言葉を聞き、何も言えなくなった。心の中では、「大袈裟だよ」と笑って返したかったのに、言葉が出てこなかった。
胸の奥が、冷たい雨粒にじわじわと濡れていくような気がした。悲しいわけじゃない。けれど、切なさが心の隙間に静かに染み込んでいく。
慧弥が抱えている不安や恐怖を、自分にも分けてほしいと思った。
夕食のプラケースや割り箸をキッチンで片付けていると、不意に郷の声がした。
「学校の帰り……水沢さんに聞いたんだけど。慧弥さんが姉ちゃんを心配して、ここに一時避難してるんでしょ?」
想乃はビニール袋の封を閉め、顔を上げる。「うん」と静かに頷く。
「俺、姉ちゃんが危ない目に遭ってたなんて、全然知らなかった……相当やばかったことは聞いて、ぞっとした」
冷蔵庫に手を伸ばし、想乃は二人分のお茶をグラスに注いだ。白いトレイに載せて、郷が座るソファまで運ぶ。大理石のローテーブルにグラスを置くと、郷が「ありがとう」と笑みを浮かべた。
「……慧弥さん、怖いんだろうな。姉ちゃんが、自分の知らないところで、死んでしまうかもしれないって」
想乃の眉が頼りなく下がった。郷の言葉を聞き、何も言えなくなった。心の中では、「大袈裟だよ」と笑って返したかったのに、言葉が出てこなかった。
胸の奥が、冷たい雨粒にじわじわと濡れていくような気がした。悲しいわけじゃない。けれど、切なさが心の隙間に静かに染み込んでいく。
慧弥が抱えている不安や恐怖を、自分にも分けてほしいと思った。



