Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜

 いつもより長めのキスに、脳が甘くしびれた。慧弥をじっと見つめ、それ以上何も考えられなくなる。

「しばらく会えないけど、必ず電話もメールもするから。俺が帰国するまでちゃんと待ってるって約束して?」
「……はい」

 想乃は赤い顔で下唇をきゅっと噛み、こくりと頷いた。「いい子だね」と言って、慧弥に頭を撫でられた。

「じゃあ行ってくるね?」

 言いながら慧弥が革靴を履き、スーツケースを転がした。パタンと閉まる扉で見えなくなるまで、想乃は慧弥を見つめ続けた。

「行ってらっしゃい……」。そう言った声は、心細さで震えていた。