Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜

「しばらく慧弥さんに会えないと思うと……寂しいです」

 想乃の沈んだ声を聞き、慧弥はいくらか目を見張る。瞬きをして、ほんのり頬を染めた。

「嬉しいこと言ってくれるね」
「……本心ですから」

 赤信号で車が停まると、慧弥がそっと顔を近づけた。不意打ちのキスに、想乃の顔が一瞬で赤く染まる。

「俺も寂しい。だから、できるだけ早く帰ってくる」

 そう囁き、目を細めた慧弥が再び唇を寄せようとした直後——後続車のクラクションが鳴った。慧弥がチッ、と舌打ちをもらす。赤面した想乃は、慌てて慧弥を急かした。

 慧弥の自宅マンションに到着し、荷物を降ろした。

 慧弥は一つひとつ部屋を回りながら、家具や家電の使い方を想乃に説明した。

 当面、郷との生活に困らないだけの生活費も渡された。買い物にも出られないのは不便だろうと、慧弥はデリバリーサービスの利用を勧めた。

 生活費の入った封筒は分厚く、想乃は多すぎる現金に思わず目を剥いた。

「想乃たちに使ってもらう寝具なんだけど。夕方届くから、コンシェルジュ経由で受け取って? 宅配業者が来たら、部屋に連絡が入るようにしてあるから」
「……了解です」

 真面目な顔つきで頷く想乃を見て、慧弥が「それと」と二の句を継いだ。