Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜

 そして、郷の外出は認めるが、想乃には帰ってくるまで部屋から出ないようにと言った。ピアノ教室でのレッスンや母親の治療で病院へ行くのも控えて欲しいと。

『家から離れたらピアノの練習ができないのはわかっている……でも、聞き入れて欲しい』
「……わかりました。緊急事態、ということですよね?」
『そう。郷くんも、慣れるまでは通学に困るだろうけど。二人でいるように俺から連絡しておく』
「はい」
『今、オフィスを出たから、すぐにそっちへ向かう。準備しておいて?』
「わかりました」

 想乃は息を詰めると、急いで自室へ駆け込んだ。

 慧弥に頼まれたことを思い出しつつ、自分と郷の荷物を棚や引き出しから取り出した。大きな旅行鞄に荷物を詰めていると、インターフォンが鳴った。想乃は慧弥を家へ招き入れる。

 慧弥は郷の荷物を詰め、二人分の荷物を車へ運んでくれた。「忘れ物はない?」と再三確認された。

「急にこんなこと頼んで、ごめん」
「いえ」
「バレンタインも……結局、デートどころじゃなくなったね。でもちゃんと埋め合わせはするから」

 運転する慧弥と、一瞬だけ目が合う。想乃は首を振り、「大丈夫です」と答えた。

「こんなの何でもありません……それよりも」
「……うん?」