Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜

 虚偽の証拠を捏造? 遠隔で社長のパソコンに侵入したということは……パスワードを盗まれたのか、それとも内部の人間による犯行か。

 まずはパソコンのログを調べ、不正アクセスの痕跡を突き止める必要がある。アクセス元のIPアドレス、改ざんされたファイルの履歴、異常な操作の記録——証拠は必ず残っているはずだ。

 電話などしている場合じゃないのでは?

「ずいぶん冷静ですね?」

 ミライに向けてそう言い放つと、すぐさま答えが返ってくる。

『“追い詰められたときほど冷静に”……そう教わったものですから』

 ……なるほど。

「“それ”は未来の僕に、でしょうか?」
『……さぁ。それはどうでしょう?』
「……ふっ、白々しい」

 慧弥は口元を緩め、かすかに笑った。ミライの正体はおおかた察しがついている。

 腕時計に目を落とした。こちらも悠長に話している場合ではなかったな。

「ではお互いに冷静に対処し、トラブルを解決しましょう」
『はい。また落ち着いたころに連絡します』

 電話を切るなり、スマホを操作した。

 ひとまず想乃と郷の布団を、急ぎで注文しておくか。