Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜

 心臓を誰かの手でぎゅっと握られたような気がした。嫌な予感がする。息が詰まるような悪寒が背筋を駆け抜ける。

 胸の奥に突如として立ち込めた暗雲と太鼓のように鳴る動悸。想乃は閉じた口の中でグッと歯を噛み締めた。

 想乃にとって、一番触れられたくない話題を、今まさに持ち出されようとしている。

 美海は腕に提げた鞄からスマホを取り出した。

「実は最近ハマって読んでるブログがあって」
「……え? ブログ?」

 不意を突かれたように、黎奈がぽかんと目を見開いた。

 ブログと聞いて咄嗟に思い出したのは、あのコメントだ。

 ——《ざまぁ。Kが簡単に心を許すはずないでしょ》

《嘘の恋人役をしているKに事実上の失恋をした》と日記に書いたら、そんなコメントを寄せられた。

「黎奈ちゃん見てこれ、『おしゃれダイアリー』ってサイトのブログなんだけど」

 ドクン——内側から心臓を殴られたような衝撃が走った。

 視界がかすかに揺らぎ、足元の感覚が不確かになる。地面がふっと遠のき、膝がわずかに震えた。

 硬直した指先から、紙袋を取り落としそうになる。

「この『ピアノS』って人が書いてるブログでね、Kに片思いしてるSさんが、期限付きの恋人役を頼まれたって内容なんだけど。これが、なかなか興味深くて」