目的地へは三十分ほどで着いた。予想通りと言うべきか、眼前にはブランドショップが軒を連ねる通りが広がっている。

 これまでに歩いたこともない道を、慧弥と手を繋いで進んだ。

「想乃の手は白魚のように美しいし、爪の形も綺麗だからストレートラインで可愛いモチーフの物がいいと思うんだよね」

 自分の手を取ってまじまじと見つめる慧弥に心拍がまた騒がしくなる。

 程なくして、ブランドとしても名高いジュエリーショップに足を踏み入れた。入り口からして超一流品を扱う洗練された店なのだろうと軽く予想がつく。今までに入ったこともない。

「いらっしゃいませ。並樹さま」

 黒と白で統一された女性店員が想乃たちに気づいて綺麗にお辞儀をした。やはり顔パスなのかといちいち感心してしまう。

「今日は彼女のために婚約指輪(エンゲージリング)を選びたいんだけど。何点か見せてもらえる?」
「か、かしこまりました」

 店員は一瞬、あっと驚いたような表情になり、即座にショーケースの中を確認した。想乃は店員に促されて左手を見せた。するとケースの中から何点かを順に出して並べてくれる。

「お客様の手だとこちらのストレートラインの物がお似合いだと思いますよ」
「……はい」