「おい、あれが噂の…」


「見た目は弱そうだけど、本当にあいつが…?」



ひそひそとあからさまに私の話をしている生徒たちにはあえて気づかないフリをしながら、少し急ぎながら昇降口に向かう。



「おい!おまえが噂の黒鉄愛菜(まな)だな?」



急いでいるというのに目の前を塞いできたいかにも“高校生からヤンキーになりました”風の男の子に、思わずため息をつきそうになる。



「…そうですけど、なんですか?私、急いでるので…」


「おいおい、本当にこの弱そうな女があの黒鉄夫妻の娘とか嘘だろ!どんな強いやつかと思ってその面拝みにきたら、こんな弱そうな純粋な女で…」



イラッとムカつきが頂点まで達して、気づいたら目の前の男子を背負い投げしてしまっていた。



「え、あ…?」



ピクピクとしか動かない様子でいる男子を上から見下ろし、ふっと鼻で笑う。