考えてみて。


突然、一華ちゃんの声がした。実際にしたわけではない。以前一華ちゃんに言われた言葉が、何故か脳内で再生されたのだ。



考えてみて。 静香がこれから、ずっと一緒にいたい相手。 いれる相手。 結婚だって考えられちゃう、そんな相手。



あの時は、それが誰だかわからなかった。けれど今なら、わかる。それはきっと、今、目の前で狼狽えている、可愛い人。



「………私、慎司君のこと、好き、なのかな…?」



ずっと一緒にいたい相手。いれる相手。

それは一華ちゃんが付き合う人を選ぶ時の基準だけれど、それを基準に選んだ相手と付き合うというならば、選んだ相手に恋をしていると言えるのではないか。

伝えるというより、心の声が漏れてしまったという方が正しい。ぼそっと、小さな小さな声で呟いた言葉を聞いてしまった慎司君が、体勢を崩しながらも素早く後退った。



「あ…。」



何故だろう。一緒にいたいという気持ちが恋かもしれないと思った途端、これまでなんとも思わなかったのに。慎司君の顔を見るだけで、心臓が速く動き出した。

この感覚を、私は知っている。

高校の時、ちょっとでも慶人君の顔を見たくて、追いかけて。でも実際に面と向かって話となると、緊張して何も言えなくなってしまうから、それはできなくて。一目見て、ドキドキを味わっていたあの頃と、同じ感覚。

……あれは恋だった。それだけは、はっきりと言える。ならば、これも恋ではなかろうか。


私は慎司君のことが、恋愛的に、好きなのではなかろうか。