しーんと静まりかえる部屋に、どちらのものだろう。心臓の音だけがドクドクと聞こえてくる。
なんとなく、起き上がる気になれなかった。理由は慎司君の大きな手が、片方は腰に、片方は頭に添えられて、身動きがとれなかったからだけではない。聞こえてくる音をいつまでも聞いていたかった。その音を聞いていると、なんとなく、安心した。
「もう、聞かないでほしい。」
慎司君が絞り出したような声で言った。
「どうして?」
「聞かない方がいい。」
表情は見えないが、声が少し、震えている。
「私が聞きたくても?」
「静香のためにならないから…。」
「それは聞いてから私が決める!」
手を解いて、よじ登る。そして、慎司君の顔を覗き込んだ。
「言って、慎司君。」
私は私で、どうしてこんなにムキになっているのだろう。慎司君に、何を言ってほしいのだろう。
「好きって、言って。」
口をついて出た言葉に、慎司君は目を見開いた。

