一人になると、色々なことを考えてしまう。その中でも一番頭を悩ませるのは、もちろん慎司君や慶人君とのことだ。
このままいけば、慎司君は引っ越してしまい、会えなくなってしまう。クリスマス前まではそれぞれ別に住んでいたのだから、元に戻るだけだといえばそうだが、以前と違って、連絡をとることはもうないのではないかと予想する。そのまま、この関係は終わってしまうのではないだろうか。
そうすると、慶人君とちゃんと付き合うのだろうか…。
温泉に浸かり、天井を仰ぎ見る。そして、しばらくもくもくと立ち込める湯気をぼーっと見送る。
「はぁ…。」
大きな大きな溜め息がでた。
慶人君ならば、喜んでお付き合いしてくれそうだと思った。いっぱい楽しませてくれることも、幸せにしてくれそうなことも、想像に容易かった。しかし、私はずっと後ろ髪引かれる思いが残るのだろうということも、想像できた。
笑顔にはなれる。幸せにはなれる。ドキドキするような毎日が待っているのだろう。けれど。
じーっと、次は自分の手のひらを見つめる。両手をぎゅっと、指を絡めて繋いで思い出すのは、慎司君の大きな手。始めは指を絡めると指が広がってちょっと痛いと思っていたのに、それも遠い昔の話。今では繋いでないと物足りなさを感じてしまう。その手を捨てて、振り払って、慶人君の元へ走り出すことは、何度考えてもできそうになかった。
「ふう…。」
私、慎司君のこと、好きなのかな…?
慶人君に対するみたいに、ドキドキしたり、心臓がバクバクしたりはしないけれど。そういう恋も、あるのだろうか。
慶人君をすぐに選べないのは、恋か。情か。
ぐるぐる考えていたら長居してしまったようで。頭がぐらぐらしてきて、逆上せてしまいそうだったので、慌てて温泉を後にした。

