恋は揺らめぎの間に




「早いけど、旅館に戻って良い?」



参拝を終えて、参道を下る。次はどこへ行こうかと話題を振ると、申し訳なさそうに慎司君は謝りながら言った。なんでも市内に祖父母の家があるらしく、そこへ少しだけ顔を出してきたいらしい。
やけに土地勘があるなと思っていたら、そういう理由があったからだとわかりスッキリした。



「行っておいでよ。 私、温泉に入ってるから、気にしないで。」

「ありがとう。」



いつの間にか繋がれていた手に、ぎゅっと力が込められた。

旅館についてそれが解かれると、館内は温かいはずなのに、急に寒さを感じた。部屋に入ると更に寒さを感じる。

私、慎司君がいなくて、寂しいんだ……。

それくらい私にとって慎司君は傍にいて当然の人物なのだろう。隣に誰もいなくて、スースーした。