あれよあれよと包まれて、それは私の手元にやって来た。
買っちゃった……。
慎司君は、どういう思いでこういうことをしてくれるのだろうか…。
じっと見つめていても、わからない。
「嬉しくない?」
私の視線に気づいた慎司君が、心なしかしゅんとしているようにみえた。
「ううん、そんなことないっ! ただ…いいのかなって……。」
質量は軽いはずなのに、箸を入れた袋が重たく感じる。
慶人君の好きに答えないまま、慎司君とずるずるとこれまできている私が、夫婦箸なんて持っていていいものか。いや、よくないのではないだろうか。
「………邪魔に、ならない?」
慎司君とはもうすぐ離れて暮らすことになる。それかは私達のこの関係も終わりを迎えるということだろう。それなのに。
「静香は、邪魔?」
「ううん! そんなことない! ただ…」
「じゃあ、問題ない。」
それに、と慎司君は続ける。
「俺も欲しかったから。」
びっくりして顔をあげる。慎司君は私のことを真っ直ぐに見ていて、少しだけ微笑んでくれていた。

