コンパが終わって外へ出ると、約束はしていないはずの慶人君が待っていて驚く。サークル仲間から今日のコンパのことを聞いたのだとか。

ナチュラルに手を繋いで歩き始めた慶人君のされるがままに、歩き出す。そんな私達をキャアキャア言ってみつめる人が多い中、一華ちゃんだけは呆れた眼差しで見つめてきた。



「慶人君、静香が押しに弱いってわかってやってない?」

「心外だなあ、と言いたいところだけれど。 そうでもしないとっていうのは、一華ちゃんもわかるよね?」



にっこり笑う慶人君と、不服そうな一華ちゃんに挟まれて、何だかいたたまれない気持ちになる。思わずごめんと謝ってしまう私に、一華ちゃんは違うでしょと怒ってくれた。



「静香が良い返事ができない理由を、慶人君はもうちょっと考えなよ。」



それから、と一華ちゃんは私と慶人君の間にぐいっと割って入り、繋いだ手を解かせた。そして私を自分の後ろに隠すようにして、慶人君との距離をとる。



「静香はまだ慶人君の彼氏じゃないんでしょ? だったらちょっとやり過ぎだし、困らせないで。」

「一華ちゃん…。」

「静香にもしっかりしなさいと思うけれど、悩む気持ちもわかるから。 慶人君の気持ちもわからなくもないけれど、早急に事を進めることは気に食わないわ。 私、応援したい人はあなた以外にもいるし。」



と、一華ちゃんが視線を向けた先を見て驚く。校門のところ。見覚えのあるシルエットがそこにはあった。



「慎司君…!?」



慎司君は私達をじーっと見つめていた。

いつからそこにいたのだろう。

慌てて駆け寄って、持っていたカイロを寒さで赤くなっている頬に当てる。慎司君は目を瞑ってされるがままになっていたが、後から二人が追いついて来ると目を開けて、私の手を下げさせた。



「こんばんは、牧瀬君。」



ただの挨拶なのに、ピリッとした空気感が漂った。