繰り返す内に足に力が入らなくなってきて、慶人君の服をぎゅっと掴む。すると唇をこじ開けて、熱い舌が入り込んできた。



「んぅ!」



びっくりしていつの間にか閉じていた目を開けると、じーっとこちらを見つめていた慶人君と目が合った。ずっと顔を見られていたなんて、行為も相まって恥ずかしい。おかげで沸き上がる熱で、お湯がつくれそうである。



「静香ちゃん。」



ちゅぱっと音をたてて唇が離れる。初めての長いキスに、息は上がり、頭はくらくらした。ぼんやりと、慶人君が見える。慶人君しか見えないといった方が、正しいのかもしれない。

目元にちゅっと口づけられると、溜まっていた涙がほろりと頬を伝って流れた。慶人君はそれを指でさっと拭い去る。



「キス、嫌じゃなかった?」



…嫌じゃなかった。ドキドキして、何も考えられなくなって。気持ちよくて。夢のようで。恥ずかしい。

こくんと小さく頷くと、慶人君はそれはそれは嬉しそうに笑って、私を抱き締める腕にぎゅっと力を込めた。首元に顔を埋め、頭を擦り寄せてくる。



「良かった。 突き飛ばされたらどうしようかと思ったよ。」

「慶人君…。」

「好き。 好きだよ、静香ちゃん。 帰したくない。」

「ちょ、ちょっと待っ…ん!」



首に、耳に、頬に、鼻に、そして唇に。順にちゅっと押し当てられる唇の感触がこそばゆくて身を捩る。



「僕達、ちゃんと付き合おう?」

「それは……」

「牧瀬君とは付き合ってないって聞いたよ。」



その言葉に、身体が膠着した。



「そ、そんなことっ… 誰から……」

「牧瀬君だよ。」



熱がスッと引いていき、身体が冷たくなるのを感じた。