毎日慶人君を目で追いかけて、少し話せただけで世界が輝いたあの日々が、実は慶人君がくれたものだったなんて。
あの頃の思い出が、次々と湧き上がってくる。その度に胸がきゅうっとなった。
あの時も、あの時も、あの時も。全て偶然ではなかったなんて。それも慶人君が私のためを思ってしてくれていたことなんて。まるで夢のようなことなのに、夢ではないなんて。
…ふと、慶人君との思い出を遡っていって、あることに気づく。
「もしかして、最初に栞を拾ってくれた時も…?」
慶人君は何か言いかけて、そして諦めたようにこくりと頷く。
「実は、ずっと話しかけたくて…。 きっかけを探してました…。」
そんなことが、ありえるの?
きゅう、どころではない。私の胸は今、これまでに感じたことのない嬉しさにぎゅうっとなって、ずっと味わっていたい痛みに襲われていた。
嬉しい。嬉しすぎて、この気持ちをなんと表現しよう。

