隣に座った慶人君は両手をぎゅっと握りしめて、そこに額をつけるようにして項垂れる。
「今になって、前に静香ちゃんに言われたことがわかってきたんだ。」
「前って…?」
「今の僕を知らないっていう… あの頃とは違うっていう話。」
大きく溜め息をついた後、視線だけをこちらに向けてくる慶人君。私を見て、また大きく溜め息をついた。
慶人君の手が伸びてきて、髪を耳にかけられる。
「確かに、静香ちゃんはあの頃とは違う。」
じっと見つめられて、動けなくなる。
「…綺麗になった。」
しみじみと、懐かしむように。それでいて、甘く囁くように。
少しだけ、頬に指が触れている。そこからじわじわと、慶人君が考えていることが伝わってくるような気がした。

