このまま意識を飛ばしてしまえたら、どれだけ幸せだったか。頭がくらっとしたが、それは叶わなかった。
どうして。一体なぜ、この2人が。
「たまたま家の前で会って、静香ちゃんをバイト先まで迎えに行くって誘われて…。」
一華ちゃんの向こうで、慶人君がハハハと少し困ったように笑っている。
確かに慎司君はいつもお仕事がない時は迎えに来てくれていた。けれども、どうして、なぜ、誘ったのか。
遊園地以来連絡を取りづらくなってしまって、慶人君を避けていたのに、その努力は水の泡になってしまった。
慎司君をちらりと見る。
何を考えて、こんなことを……?
全員が黙り込む、異様な光景。沈黙を破ったのは、慶人君だった。
「…とりあえず、ご飯でも食べない?」

