慎司君がいなければ、慶人君の告白を受け入れただろうか。
慎司君に言われたことを、ずっと考えている。けれど、答えはなかなかでなかった。
卒業式の日に、私は慶人君のことを忘れようと思った。それは慎司君と駅で会う前に、自分で決めたことだ。だから、あの日駅で慎司君と会おうが会うまいが関係のないように思えた。例え会わなかったとしても、迷うのは迷っていただろう。忘れようとしたのに今更、どうして?って、そう思っただろう。
でも、今、迷っているような迷いはないだろう。
慎司君と慶人君を天秤にかけるような、そんな迷いは。
「…心配で様子見に来たけどさ、これは酷いね。」
「いらっしゃいませ〜…。」
バレンタインも目前。ピンクに彩られる店内の装飾も、今の私にはセピア色にしか見えない。
一華ちゃんはお母さんに頼まれたという、期間限定のバレンタインスイーツを次々に注文していく。
「その顔で商売できるの?」
「それ、店長にも言われて…今日はもういいって。 一華ちゃんがちょうど最後のお客さんです…。」
「そ、そう…。 じゃあ、待ってるから一緒に帰りましょ? うん、そうしましょう!」
この悩みは一華ちゃんに相談したらいけないような…自分で考えて、自分で解決しなければいけない気がして、一華ちゃんには連絡していなかった。しかしそのせいで余計な心配をかけてしまったのかもしれない。色んな人に迷惑をかけていると、更に気落ちしてしまう…負のスパイラルだ。
バイトを早めにあがらせてもらって、お店の裏口から外へ出る。暗がりから、一華ちゃんの待つ明るい大通りへは、いつもその眩しさに目が眩んでしまう。目を細めて歩いていくと、一華ちゃんは誰かと話しているようだった。
「一華ちゃん?」
一華ちゃんは美人だから、またナンパでもされているのだろうか。駆け寄っていったタイミングで、目も明るさに慣れて相手の顔が見えてくる。その顔にピタリと足が止まった。
「えっ……?」
「し、静香っ…!?」
一華ちゃんが慌てて振り返る。
「わ、私は何も知らないわよ!? 今この2人が来て…! 2人が面識あるなんて、私も今知ったんだけど!?」
そこにいたのは、慶人君と慎司君の2人だった。
………目眩がした。

