恋は揺らめぎの間に




私が話す間、慎司君はずっと黙っていた。ちらちら表情を窺っていたが、表情はずっと暗いまま変化はなく、その気持ちを読み取ることはできなかった。

話し終えてからしばらく。慎司君はテーブルに頭をつけて、完全にその表情を隠してしまった。



「静香は……」



ようやく言葉を発した慎司君に何を言われるか、心臓がバクバク大きな音を立て始める。

ちゃんと話していなかったことを怒られる?それとも、自分で自分が嫌になるくらいだから、私に嫌悪感を抱く?呆れられる?
もう、慎司君とは一緒にいられなくなる……?

答えを聞くのが怖くて、目をギュッと瞑る。



「卒業式のあの日のこと、覚えてるか?」

「え?」

「俺がナツキの代わりになるって言った時のこと。」



私はこくんと頷く。

あの日のことは、忘れたくても忘れられない。だって、初めての恋を終わりにしなければいけないと泣いた日だ。慎司君に、救われた日だ。



「静香がナツキと再会したって聞いた日から、ずっと考えてた。 もう俺はいらないんじゃないか、俺じゃ代わりには、やっぱりなれないんじゃないかって。」

「そんなことっ…!」

「ナツキも静香が好きだったんだろ? それも、高校の頃から。」



慎司君が顔をあげる。



「良かったな。」



慎司君が、無理して笑っていた。