「あー! 過去の自分、何やってるんだろう!」
大袈裟に、項垂れてみせる慶人君。
「あの頃何もしてなかったから、静香ちゃんの気持ち、凄いわかるよ。 今更だよね。 信じられないっていうのは、それはそうだと思う。」
「ごめんなさい…。」
「いや、静香ちゃんが謝ることじゃないよ。 今の僕の告白が信じられないくらい、あの頃は好きだったって知れて、ちょっと嬉しいしね。」
確かにそう受け取れることを言ってしまったと、途端に恥ずかしくなる。顔が真っ赤になるのがわかって顔を隠すと、慶人君は更に嬉しそうに笑った。
「好きだよ、静香ちゃん。 そんなところも。」
「か、からかってませんか…!?」
「いやいや。 気持ちは言葉と態度で伝えていかなきゃいけないと今学んだところなので、それを実行したまでです。」
「それをからかっていると……!」
もう!と振り上げた手をパシッと掴まれる。次の瞬間、視界が暗くなり、ちゅっ、と小さな音がした。
わずか1秒。それにも満たないくらいの短い間の出来事だった。けれど、その瞬間世界の時が止まったかのように感じた。長く、長く、感じた。
おでこに触れた柔らかい髪が、すっと離れていく。
「あ……。」
思わず、唇に指を当てた。
慶人君がいつにない真剣な目で、こちらを見ている。
「…僕とのこと、ちゃんと考えてくれないかな? 今からでいいから。 改めてでいいから。 1から考えてみてほしい。」
あまりの驚きと、あまりに真剣な眼差しに動けなくなっていると、慶人君の手が頬を滑って、耳横の髪をかき上げ…畳み掛けてくる。
引き寄せられて、今度はおでこにちゅっと唇が触れる。
「ちょっと、信じてくれた? 好きだって。」
身体が離れて見た慶人君の顔は耳まで真っ赤で恥ずかしそうで。だけど目には熱がこもっていて真剣で。
慶人君の好きを、信じずにはいられなくなってしまった。

